4-3.登場! アルティメットレア!

 玄関ホールには、複数人の気配があった。


 来客に対応している爺やと、ノーマルメイドとノーマル従僕。

 ノーマルメイドとノーマル従僕は、ほぼ素材といってもいい、ガチャの常連さんだ。

 前世でゲットした総枚数は何枚になったのか、全く覚えていない。

 成長させてもハイノーマルどまり。

 彼ら彼女らには罪はないが、いわゆるハズレ枠だ。


 ゲームではそういう目でしか見ていなかったが、この世界では、働き者でとっても真面目で優しい人たちだ。

 前世でハズレ枠呼ばわりしてごめんなさい。

 転生してからは、心を入れかえてすごく反省しています。


 来客は三人。


 ひとりは護衛、もうひとりは荷物持ちの従者といったところか。


 扉が開いた気配に、来客たちが一斉に振り返った。


 武装した護衛は、アドルミデーラ領の兵士が身につける制服を着ている。茶髪、青い目の青年だ。


 初めて見る顔だが、彼はアドルミデーラ家に仕えている護衛戦士だ。

 一般兵よりも優れているので、普段は要人の護衛をしている。


 マート・メルティー。


 彼は将来、アドルミデーラ家が所有する私兵の団長を務めるようになり、領内に大量発生した魔獣を討伐するときに大活躍するのだ。


 彼もライースガチャでは頻繁にお目にかかるレアキャラだ。

 赤の軍事力に属するのだが、成長させるとスーパーレアにまで進化してくれるので、序盤では大変お世話になった。


 そして、もうひとりは……。


 ミーツ・ケイル。


 薄い茶髪、赤茶色の目の青年だ。

 マートとは属性違いになり、同じくレアキャラなのだが、成長させればミーツもスーパーレアになる。彼もまた序盤では大変お世話になるキャラだ。

 属性は青の統治力。領主に仕える秘書官で、アドルミデーラ領の行政を支える人物だ。


 護身用なのか、飾りなのか、腰には細身の剣が下がっている。

 そして、両手で重そうな木箱を抱えていた。


 自然災害や飢饉、疫病が流行したときなど、物資の手配や資金繰りに大活躍したキャラだ。


 ガチャではハズレ枠っぽい扱いを受けていたが、領地の発展には必要不可欠な人材である。

 きっと、このキャラも成長させないとレアのままで終わってしまうのだろう。


 だけど、どうやって、彼らをスーパーに成長させたらいいのだろうか?


 ガチャキャラの成長方法は寝る前に考えるとして……。それよりも、最後のひとりだ。

 ノーマル、ノーマル、レア、レアときたのだから、最後は……。


 パンパカタッタタ――ン!


 効果音と共に、眼光鋭い壮年の男性と目があった。


(ひゃぁぁぁぁ――っ)


 踊りたい。

 今すぐ感激の舞を踊りたい。


(アルティメットレア! きた――!)


 ジェルバ・アドルミデーラ侯爵よりも若く、ライース・アドルミデーラよりは年上の美形キャラ!


(きた! きた! きた! いきなりきた!)


 サブキャラのお父様とほぼ同じ程度のデータが、あたしの脳内に流れ込んでくる。

 脳に優しい、穏やかで淡々とした情報が、ライースとカルティの設定の穴を埋めるようにして、今のあたしの中に加わっていく。


 お父様の異母弟にして、ライース兄様の叔父!


 短い黒髪に、緑の瞳の知的な美丈夫。

 アドルミデーラ領の領主代理――いわゆる代官として――領地の運営を任されているイケオジ!(ただし、今はまだ若い)


(カシューネ・アドルミデーラだ! でた――!)


 ライースガチャが登場したばかりのときは、キャラの最高ランクはスーパーレアだった。

 スーパーレアのインフレ化が目立ち始めた頃、さらなる上の存在アルティメットレアが登場した。


 『キミツバ』で登場した、初のアルティメットレアが、カシューネ・アドルミデーラだ。


 アルティメットレアなので、同じカードを五枚合成させると最終は三属性持ちになるという、お財布にびっくりなキャラだった。


 カシューネの場合だと、カンストすると統治力(青)、生産力(黄)、開発力(紫)という、いかにもできる代官ですというカードになった。


 ライース兄様のバッドエンドのルートによっては、アドルミデーラ家が滅亡するときにカルティに暗殺されたり、カルティに毒殺されたり、カルティに射殺されたりする人だ。


 同じカードを合成していくと死に方のバリエーションが増えていくという、驚きの謎進化をとげたキャラでもあった。

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