3-3.ライースガチャ

 いや……お父様がこんなに早く到着したのは、ライース兄様がお父様に知らせた内容が『あたしが池に落ちて危篤』だったからだろう。


 用意されたシナリオどおりの『あたしが池で溺れて死亡』だったのなら、お父様は出立前に仕事の引き継ぎやら色々と手配をして、王都を出発する時期も遅くなっていただろうし、到着までに時間がかかったに違いない。


 それで間違いない。……と思う。


 本来のシナリオ通りにすすんでいたのなら、お父様の到着は、どんなに早くても十日。二週間はかかったんじゃないだろうか。


 であったら、『ライース・アドルミデーラ 真夏の静養地編』と『カルティ・アザ 晩夏の別離編』がうまい具合にリンクする。


 それにしても……通常は一ヵ月の時間をかけて移動する距離を、本気をだしたらたったの五日。


 お父様の本気はすごい。


「ライース兄様もおーとからここまで、五日でとうちゃくすることができますか?」

「いや。無理だ」


 なんと……驚きの即答だった。


 後で知ったのだが、お父様が領主特権で指定した名馬を乗り継ぐとか、夜の街に乱入するという荒業が、ライース兄様にはできないから「いや。無理だ」の返事だったらしい。


 名馬を乗り継ぐことができたら可能とのこと。

 そうですよね。

 ライース兄様はハイスペック攻略キャラですもんね。

 それくらいのこと簡単にやっちゃいますよね……。


 それにしても、お父様ってば、すごすぎます。


 それについてきたという、最後のひとりもすごい人なんだろう。

 もしかしたら、ゲームに登場するハイスペックキャラなのかもしれない。


(護衛の人って、ライースガチャのキャラかもしれない)


 なぜか『キミツバ』では、ストーリーの中盤からガチャシステムが導入されたのだ。


 正式には『協力者ガチャ』という名称だったのだが、ユーザーたちは『ライースガチャ』と呼んでいた。


 協力者たちというのが、ライースが放浪していた期間に知り合った才覚あふれる優秀な人たちという設定なのだ。


 その人物たちを王都に呼び寄せるという名目で、ガチャでキャラを引き当てるという……。


 もちろん、美麗イラストとスペシャルボイスでユーザーを釣り上げる課金ガチャだ。

 出現率もギリギリにまで絞られ、金も搾り取られ、百連ガチャになると、お目当てのキャラは最後にしかでてこない……という、定番のお金ホイホイだ。


 特別イベントのたびに、そのイベントクリアに必要不可欠な新しいキャラが登場し、それを引かないことには、イベントのエンディングスチルと詳細が開放されないという残酷仕様だ。


 ライース兄様が他のキャラに比べて強いといわれたり、バッドエンドで国を滅ぼすことができるのは、この強力な協力者たちのおかげ……ということだ。



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