3-2.お父様が本気をだしたら

 運営の設定ミスかもしれないけど、今の時点では、お祖母様の死因は、穏やかな心労説を採用しておこう。


 暗殺者に襲われる、といった本編で頻繁におこる定番イベントは……本編だけにしてほしい。


 ということで、お父様と会う前にお祖母様は――死因はわからないけど――死んでしまうので、怒り狂うお父様からカルティをかばう者はだれもいなかったのだ。


 あたしが高熱から目覚めたとき――あたしが池に落ちて七日後――までには、お父様はすでに別荘に到着していた。


 昨日、地理の勉強をしたときに、ライース兄様に王都とアドルミデーラ領をつなぐ街道を教えてもらった。


 距離感がいまいちわからなかったので、アドルミデーラ領から王都に行くまでには、どれくらいの日数がかかるのか質問してみた。


 ライース兄様は馬を変えずに移動する場合や、馬車で移動する場合など、色々なケースを詳しく教えてくれた。


 結論から言うと、徒歩はやめたほうがいい、ということはよくわかった。

 平民でさえ、王都に行く場合は、乗合馬車を乗り継いで行くのが一般的なようだ。


 辺境伯とまではいかないが、そこそこ王都とは距離がある。

 その分、アドルミデーラ領は広大だ。


 残念ながらアドルミデーラ領に海はない。

 魚は川魚か湖の淡水魚だ。

 新鮮な海の幸は食卓に並びそうにもないとわかって、すこしばかりがっかりする。


 そもそも、この国自体が、大陸の真ん中に位置しているので、海とは接していないのだ。


 お父様が馬車で領地に戻る場合、各地の視察やらその地の有力者との会談といった領主としての義務とアドルミデーラ家の家長としての社交を行いながらの移動となる。

 なんと、仕事をしながらだらだらと移動するので、到着するのに一ヵ月近くもかかるそうだ。領主様って大変だ。


「レーシアが池に落ちたときは……父上は、仮眠もそこそこに、ひたすら馬を走らせたそうだよ」


 闇の中でも走ることができるよう訓練された名馬を何頭も乗りかえての強行。

 同行していた警護の者が次々と脱落していくなか、お父様はひたすら馬を走らせたそうだ。


 場合によっては、夜間、閉じられている街の門番を強引に起こして、街に押し入り、数時間の仮眠の後、再び門番を起こして街をでていく……という、かなり無茶苦茶なことをしていたという。


「お父様は、なんにちでとうちゃくできたのですか?」

「レーシアが池に落ちた日から五日後の昼過ぎだ。供はひとりしか残っていなかった」

「ふぃえ……」


 驚きのあまり、変な声がでてしまった。

 あたしが予想していた以上の強行軍だったようだ。


 五日以内にライース兄様が家出して、お祖母様が死亡するなんて……なかなかハードなスケジュールだ。

 ちょっとおかしすぎる。

 なにかが……ヘンだ。



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