3-1.お祖母様の死因
それから一週間後。
暦は……九月になっていた。
『キミツバ』の世界設定では、一週間は七日で、一応、ファンタジーっぽく、『ツキの日』『ヒの日』『ミズの日』と呼ばれている。
『ヒノヒ』って、せめて、『ホノオノヒ』くらいにする知恵はなかったのだろうか。日曜にあたる日は『ニチノヒ』だ。
よっぽど疲れていたのだろうか。
たまに運営の手抜き設定がちらほらある。
ちなみに一か月は四週間だ。二十八日で、十二か月ある。つまり、一年は三百三十六日。
だからどうした、という情報なのだが……。
今日は九月五日、木の日だ。
九月ということは……秋だよね?
もう、秋になったよね?
避暑地の山々は一足早く、すっかり紅葉で色づいているよ?
すっかり秋モードだよ?
そろそろ、寒くなってきたよ?
あたしに着せられる服が薄い布地から、厚手のものにかわってきたよ。
ちょっと、秋にしてはもこもこすぎるような気がしてメイドに言ってみたら「ライース兄様のご指示にしたがったまでのこと」だそうだ。
そういうライース兄様は薄着だけどね。
すぐにジャケットを脱いでシャツだけになるから、メイド長のマイヤによく怒られているよ。
夏が終わって、秋になったけど、『ライース・アドルミデーラ 真夏の静養地編』のエピローグの数行がまだ残っているんだけど……。
真夏じゃなくなったよね?
ということは……どういうことだ?
困ったことにあたしは『カルティ・アザ 晩夏の別離編』に関しては概要しか知らない。
それにこれは本編と切り離された限定イベント。
なのでおまけのエピソード的なノリで、運営もそこまでしっかりと設定を作り込んでいたわけではない。
つまるところ、イベント発生日はいい加減だし、細部まではつくりこまれてはいない。
それどころか、死亡イベントだらけのゲームとはいえ『ライース・アドルミデーラ 真夏の静養地編』『カルティ・アザ 晩夏の別離編』……考えても、考えてもタイムスケジュール的に無理がある。
池に落ちてあたしが死ぬ。
ライース兄様がそのショックで放浪の旅にでる。
そして、お祖母様も死ぬ。
お祖母様はあたしの後を追うようにして死ぬ……と表現されていた。
いくら前々から体調を崩していたとはいえ、お祖母様の死亡があまりにも急すぎるのだ。
死因は自害か他殺か心臓発作か?
……と思いたくなるくらい突然で不自然なのだ。
それこそもう、アドルミデーラ家が呪詛の攻撃でも受けているんじゃないかってくらい、事件が起きる間隔が短い。
あたしが死んだり、ライース兄様の行方がわからなくなったりして、お祖母様は心労がたたってぽっくり逝ってしまう……という流れを演出したかったのかなぁ。
死因はわからないが、お祖母様はお父様が領地に到着する前に死んでしまう。あっという間で遺言を残す間もなかった。
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