2-22.健康的な生活
昼よりも、みんなが寝静まった夜の時間の方が、あたしは忙しかった。
この寝室には二つの扉がある。
廊下にでる扉と、続きの間にでる扉があった。
続きの間は、居室になっており、爺やがあたしのために、子どもに必要そうなおもちゃやら、本などを揃えてくれている。
家具も、一応、子ども仕様の小さめなものになっている。
だけど、この世界の基準なのか、厳格なお祖母様の好みを尊重したのか、子供部屋っぽい、楽しくてファンシーな家具や装飾ではなく、あくまでも質実剛健な……いわゆる無骨な……部屋となっている。
ゲームの中のヒロインの部屋は着せかえ機能があって、課金すれば色々な部屋にできたんだけど……そういや、特に部屋の模様が変わったらゲームを有利にすすめられるようになるバフはなく、純粋にビジュアルを楽しむだけのものだったので、あたしはデフォルトのままだった。
それが……まさか、この部屋にも反映されている……ということなのだろうか?
ま、中身が三十路なので、そのあたりは気にならない。
必要なもの……おもちゃじゃないよ……紙だとかペンだとか、デスクがあるので、あたしは満足している。
居室エリアにも扉がいくつかあり、浴室、トイレが部屋ごとにあるようだ。
なんて贅沢な間取りなんだろう。
この世界の基準で考えると、ホテルのスイートとか、セレブの住まうマンションといったレベルじゃないだろうか?
さすが、上流貴族の子どもが使う部屋だ。すごすぎるわ。贅沢すぎるわ。
前世のあたしのアパートはユニットバスだったから、浴室とトイレが別れている……いや、もう、六畳一間ではなく、寝室、居室が独立している段階で、もう、ハイレベルな暮らしだ。
ウォークインクローゼットではなく、衣装部屋もあり、その中にはフレーシアだけの衣装がずらりと並べられている。
圧巻だ。
まあ、当たり前だけど、こんなところに薄い本とかは似合わないな。
ここにある服は、爺やがひととおり用意してくれていたんだけど、ライース兄様がしばらく滞在する宣言をしたら、いきなり衣装が増えだした。
一枚、二枚といった単位ではない。倍増だ。
毎晩、衣装部屋の扉を開けるごとに、衣装が増えている。
こんなにたくさんの服をどうしろというのだろうか……。
子どもなんて、すぐに成長するんだから、沢山用意しても、着ないうちに大きくなっちゃったりとか、するのにね。
せめて、成長を見越した大き目の服とかにしておけばいいのに、今のあたしにピッタリなサイズが用意されている。
前世では、自分のファッションよりも、キャラのコスプレの方に興味があったあたしには、ちょっとこの衣装の数には若干引いてしまう。
まあ、これが中世風ファンタジーの衣装コスプレと思えば、気持ちもあがってくる……かな?
衣装の枚数チェックを終えると、あたしは、居室の遊び場として想定されている広いエリアで、筋力アップのトレーニングを行う。
インナーマッスルだの、体幹だの……ヨガやストレッチなんかも、陸上部だったので、そういうのには詳しい。
まあ、あの過酷な激務を耐え凌げたのは、基礎体力があったからだろう。
とはいえ、身体はまだ六歳児だし、病み上がりだから、無理はしないように自制している。でも、自主トレは毎晩欠かさずやるようにしている。
そういえば、就職してからはそんなこともしなかったなぁ……と、思う。
会社との往復。その日のうちに帰宅できるかどうかという日常で、ご飯を食べて、ゲームをして、寝る……でいっぱいいっぱいの生活だった。
前世よりも虚弱だけど、今世の方が、夜更かしはしているけど、まちがいなく健康的な生活を送れているようなきがするな。
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