2-21.腐女子の正直な気持ち

 推しキャラのライース・アドルミデーラにぎゅっと抱きしめられたり、「あ――ん」されたりすると、もう、このまま死んじゃっても思い残すことはない!


 ――って乙女魂が心の底から雄叫びをあげるけど、やっぱり、しぶとく生き残って、本編を……できれば、他の攻略キャラとの濃密なからみを……特等席で見たい!


 ――というのも、嘘偽りのない腐女子の正直な気持ちだ。


 せっかく、メインキャラの近くにいるのだから、他のメインキャラの恋を成就させるキューピットになるのも、よろしいんじゃなくって、ねえ、オホホ。


 ――みたいな、おせっかいオバサンに転身するのも、新しい生き方かもしれない。


 ゲーム本編では、なんか、もどかしい組み合わせとかあったからね。


 ヒロイン逆ハーレムのカオスは阻止し、腐女子が夢見たカップリングを成就させるのも面白そうだ。


 そう! 薄い本だけでしか実現しなかったカップリングも、この世界ではありえ――るかもしれない。

 いや、なければ、やればいいだけだ!


 織田信長もホトドギスは鳴かせなさいとおっしゃっていた!

 違った、豊臣秀吉だ……ったっけ?

 徳川家康? 吉宗?

 歴史は苦手だったんだよね。


 戦国なんとかとか、幕末なんとかとかは、食指が動かなかったからなぁ……。


 全キャラのスチルシーンコンプリート……は『巻き戻しの砂時計』という便利アイテムが存在しないので、不可能だ。


 だったら、自力でワンシーンでも多く、一秒でも長く、垂涎のシーンにでくわしたい。


 さらに贅沢を望むのなら、キャラ死亡ではなく、キャラが生き残る方での、リアルスチル場面が見たい。可能な限りたくさん見たい!


 と、ライース兄様とカルティの名シーンを思い出し、脳内でジタバタ悶えつつも、大人なあたしは厳しい現実から目を逸らすことはしない。


 真摯に受け止め、これからのことをかんがえたよ。


 とはいえ……日中は、ライース兄様とカルティの監視の目があったので、下手なことはできない。


 せいぜい、布団の中にもぐりこみ、妄想の翼をジタバタ悶え広げるくらいだ。


 ぼーっとしている間に、前世のことや、ゲームのもっと詳しいことなどを思い出そうとしたんだけど、それがうまくいかなかった。


 メインキャラはライース兄様とカルティ。

 サブキャラはお父様。

 デイラル先生や爺やをはじめとする使用人たちはモブだったので、現世の六歳児だったアタシが知っていることしかわからない。


 あたしとお祖母様は……なんだろうね。

 設定上ではでてきているけど、細部設定がないキャラとでもいうのかな?

 

 この一週間、時間だけはあったので、色々と考えた結果、メインキャラに関する記憶は、実際にそのメインキャラに会わないと思い出せないんじゃないのかな……。目と目が合った瞬間に思い出すんじゃないかな……という予測をたてた。


 サブキャラも同じように、実際に会って目を合わせないと思い出せないんだろうけど、サブキャラの場合は、メインキャラの設定を補う形で、不足情報をゲットできる……のではないだろうか?


 その予測が正しいのか、間違っているのかは、他のメインキャラ、サブキャラに出会わないことには確認しようがない。


 つまり、領地の保養地から、王都へと移動しないことには、他の攻略キャラには会えないのだ。


 なので、今の時点では保留事項だ。


 他の攻略キャラに会いたければ、がんばって『まじゅいおくちゅり』を飲んで、体力を回復して、デイラル先生に完治のお墨付きをもらわなければならないだろう。


 でないと、一生、領地暮らし、身体が回復せずに静養地の別荘に留めおき、となってしまいそうだ。


 田舎でのスローライフよりも、王都でのイケメンパラダイスの方が、ぜったいに充実した転生ライフになるはずだ。



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