2-20.過剰過保護対象
……こうして……あたしはあたしが死亡するイベント『ライース・アドルミデーラ 真夏の静養地編』を無事に乗り切った。
目覚めてからは熱がでることもなく、順調に回復している。
一週間が過ぎたのだ。
そろそろ、寝台からでて、室内、屋敷内をウロウロしたくなる頃だ。
ライース兄様は、あたしがベッドからでるのに反対したが、デイラル先生が意見してくれた。
ずっと寝たっきりだと、筋力が低下してしまうので、そろそろリハビリをはじめなさいって言ってくれた!
でも、まだあのまじゅい薬は続行なんだけどね……。
まずは、食後の運動として、寝室の中をウロウロする。
テラスにでたかったんだけど、「山間部の夏は涼しい。風邪をひいたらどうする」というライース兄様の猛反対にあって、室内限定となってしまった。
ライース兄様って、ちょっと過保護。
本編では……たしかに、仕えていた王太子や、ヒロインに対して、ものすご――く、過保護だったよな。
でも、過剰過保護対象はそのふたりだけに限定されていたはずだ。
家族は大事にしていたけど、そこまで過保護じゃなかったよ?
というか、優秀な異母弟たちに無茶振りして、馬車馬のように容赦なくこきつかっていたよ。
過剰な過保護っぷりを展開させるライース兄様と、ちょっと明るくなって人懐っこくなったカルティの手助けもあって、あたしの体力はゆっくりとだが回復している。
だがしかし!
ここは、ユーザーの財布に全く優しくない、あの『キミツバ』の世界観だ。
死亡決定キャラが、死亡回避に成功したとしても、なんとしてもターゲットキャラを殺そうと……さらに二重、三重の死亡イベントが罠のように新たに発生してくるので、油断はできない。
そう、油断は死へと直結するのだ!
そのよい例がジェルバ・アドルミデーラ侯爵であり、ヒロインの弟だったりする。
その『死んでもらわないと話が進まなくて運営が困るリスト』の中にフレーシア・アドルミデーラが加わっていないことをひそかに願うしかない。
ジェルバ・アドルミデーラ侯爵やヒロインの弟はサブキャラだが、あたしはモブにすらなれなかったモブだ。たいして重要視されていない……と思いたい。
だが、今後の生活を考えるに、他力本願ではなく、自分でも死亡回避する術は身につけておかなければならないだろう。
わかりやすいところでは、護身術をマスターするであったり、体力強化に励むであったり、危険人物や味方となりそうな人物を懐柔するとか……?
そのようなことをこの一週間、ベッドの中で考え続けた。
自分の死亡を回避するついでに、他のキャラの無駄死にもいっしょに回避できたら万々歳だ。
せっかく、推しのいる世界に転生できたのだから……長生きしたい。
せめて本編のオープニング、いや、本編が本格的に始まるまで、いや、第二部のエンドを見届けるまで生き延びて、生でゲーム内で発生したできごとを見てみたい。
さらに欲を言うならば、まだ制作発表段階の第三部とやらのストーリーをちょっと……いや、どっぷりと堪能してみたい。
……と思ってしまうのは、ごくごく、自然のなりゆきだよね。
人間の避けることができない煩悩だよね。そういう発想は少しもおかしくはない……はず。
田舎でまったりスローライフとか、前世知識を駆使して異世界を掌握するとか、そんな呑気なことをやってたら、大事なイベントシーンを見逃してしまうから、それは絶対にやらない!
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