2-13.お父様の説教
さすがに二時間超え……しかも同じフレーズが延々と繰り返されるヘビーローテーション説教は、聞いているフリであっても疲れてくる。
オトナでもけっこうくるのに、六歳児の肉体と体力しか備わっていない今のあたしには、なかなかの試練だった。
寝台の脇で立っているライース兄様の眉が、困惑しているかのようにへにょんと下がりっぱなしだ。
父親の説教がなかなか途切れないので、なだめるタイミングがみつからないのだ。
しかし、ここで強引に仲裁に入って――ライース兄様が口をはさむことによって――逆にお父様を興奮させてしまい、変なところに飛び火したらまずいと考えているのだろう。
あたしでも考える。
そういうのを前世では『ヤブヘビ』という。
矛先があたしからライース兄様に変更され、後継者としての自覚が足りないだの、どうだこうだのと再燃されても困る。
ライース兄様……ものすごく、懸命なご判断だと思います。
なので、ライース兄様の援護は期待できない。
隣室に引きこもっているカルティなど、論外だ。戦力外だ。
こうなってしまったら、もう開き直って、お父様が満足するまで、ひたすら耐えるしかないのだろう。
だた、ちょっと……お父様の説教が想像以上に長くて、あたしはそろそろ疲れてきました。
アドルミデーラ侯爵って、こんなにネチッコイ性格だっただろうか?
ゲームとここの世界には、少しズレがあるのだろう。
ぼんやりとしだした頭で、あたしはアドルミデーラ侯爵について考えてみる。
アドルミデーラ侯爵は、アドルミデーラ家の家長であり、広大な領地を所有する裕福な領主であり、攻略キャラの父親で、王太子の伯父……。
攻略キャラの脇役、サブキャラで、それ以上のことは考えてもなかった。
アドルミデーラ侯爵が、こんなにも説教大好きなヒトだとは知らなかった。
お父様、説教はその辺りで終了して、娘の体力の限界についていい加減、気づいてほしいです。
お願いです。
それこそ、病み上がりだということを忘れているんじゃないだろうか、というくらい、お父様の説教には遠慮がない。
ベッドで聞いているから、まだなんとか耐えているんだけど、これが、たとえば、お父様の執務室に呼び出されて、立ったままで説教を聞く……となると、貧血で倒れてしまうレベルです。
朝礼で校長先生の長い話を聞かされて、貧血で倒れるようなものです。
でも、こんなにしゃべってばかりで、お父様は疲れないのだろうか……と、逆に心配になってきた。
水も飲まず、二時間以上、延々としゃべりつづけて喉が辛くないのだろうか?
高スペックの攻略キャラの父親も、それなりにスペックが高いんだろうね……。
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