1-13.未来の美形キャラ
(あたしは、乙女ゲームの世界に転生した。ゲームの内容を少しずつだけど、思い出しつつある……)
自分自身を落ち着かせるためにも、現状を分析し、心の中で呟く。
見た目は小学生だけど、中身は結婚していてもおかしくはない大人だ。
ここは、冷静に、慎重に対応して、順風満帆な楽勝転生スタートダッシュといきたいところだ。
いきなりあふれ出たカルティ・アザの情報量には脳がびっくりしたが、それも時間の経過とともに落ち着いてきた。
ふかふかのベッドに横になり、カルティにさらりとした肌触りの気持ちの良い掛け布団をかけてもらう。
う――ん。前世で使っていた掛け布団よりも高級っぽそうだ。
カルティ・アザのあたしに対する態度は、お祖母様への献身ぶりと比べると温度差はあるが、仕事はきっちりとしている。
お祖母様がカルティに直接頼んだということもあって、あたしのことが気に入らないからといって、わざと手を抜いたり、嫌がらせをしたりはしない。
そこは評価すべき点だと、あたしは素直に思う。
色々な物語の世界でも、前世でも、嫌がらせをするヤツや、ヒトが見ていないところでは仕事の手を抜くヤツがごまんといたんだから……。
カルティは陰気な少年ではあるが、あと十年もすれば、腐女子を惑わすイケメンに成長するということがわかると、見る目も変わってくる。
現金なもので、心に傷を負ったミステリアスなキャラと思えば、納得できなかったことも我慢できるようになる。
これぞ、腐女子スキルだ。物事を歪めてとらえることは大得意だ。
未来の美形キャラに世話をされ、あたしはゆっくりとではあったが、自分の状況を客観的に眺めることができはじめる。
それに、カルティの年齢と季節からして、キャラの過去やら、裏設定を知るシークレットエピソードが発生する時期の可能性が高い。
第一部でも第二部でも、カルティには散々な目にあったので、それほど思い入れのあるキャラではなかったが、あわよくば、シークレットエピソードを、陰からコッソリこの目で見ることができるかもしれない。
これは、メチャクチャラッキーな展開なのでは?
推しキャラのタペストリーが消えたとか、抱きまくらがない、とか言っている場合じゃない。
そんなことを考えると、なんだか胸がドキドキしてきた。
「お、お嬢様……、お顔が真っ赤ですが、また熱が?」
(いえ、違います。ちょっと、これから起こることを妄想して、心拍数がとんでもないことになっているだけです……)
腐女子の心を知らないカルティは、青ざめた顔で、わたしをのぞきこむ。
泣いたり、心配したり、怯えたり……まだ成人していないカルティの表情は、忙しくコロコロとかわる。
これはこれで、可愛い。
オネーサンの『護ってあげたい』心理を巧妙に刺激してくる。
さすが、腐女子たちから金を搾り取れるだけ搾り取るゲームの看板キャラだ。
推しキャラがやっぱり一番なのだが、実際に三次元なヒトとして目の前に存在し、動いて喋るキャラほど強いものはない。
……と、あたしは痛感した。
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