第75話

side 優斗ゆうと


陽希はるきさんのお話の前に僕が話したいことがあるのですけど、良いですか?」


陽希さんから陽希さんが進学した秀優しゅうゆう高校へ進学しないかと打診されて、僕だけですぐに決められることではないけども真剣に検討するということを約束して、更には僕が目指すならと梨衣子りいこ朱音あかねさんも考えるというところで話がまとまって、次に梨衣子達へ話したいことがあるというところで仕切り直したところで、直感的に僕に関わることだと察したので先手を取らせてもらった。


「もちろん構わないわ。

 ここにいるみんなが聞いて良い話かしら?」


「もちろん大丈夫です。

 むしろ、みんなには聞いていて欲しいです」


「そう。じゃあ、たゆに譲るわね」


「ありがとうございます」


陽希さんが譲ってくれたので、その場で立ち上がり体ごと梨衣子の方を向いて瞳を見つめた。


「え?なに?ゆうくん」


これから僕が何を言うつもりなのか見当も付いて無いようで戸惑う梨衣子。


「梨衣子・・・いや、初芝はつしば梨衣子さん。僕と付き合恋人関係になってください」


「え?え?なんで?」


「僕はずっと梨衣子のことが好きでした。

 意気地がないから不安にさせて、大井おおい先輩にバレンタインのチョコを渡すなんて真似をさせてしまったし、そのせいで梨衣子が怪我を負わされたり変な噂が流されたりしたし、それに梨衣子が何を考えているのかわからなくなって僕も迷いが生じてしまったけれど・・・僕がちゃんと気持ちを伝えていれば良かったことだし、全てを梨衣子のせいにして自分だけ知らん顔なんて卑怯者のすることだと考え直したんだ。

 朱音さんや芽衣子めいこちゃん、それに陽希さんが僕のことを好きだと言ってくれたことで真剣に考え直したんだけど、やっぱり梨衣子が好きだという気持ちに気付けたんだ。

 今更遅いかもしれないけど、もう一度僕のことを考えてくれると嬉しいです。

 よろしくお願いします」


拙くて途中で何を言っているのか自分でもわからなくなったけれど言いたいことを言い切って梨衣子に向けて頭を下げた。


「お姉ちゃん、返事しないと」


固まって動かなくなった梨衣子に対して芽衣子ちゃんが返答を促してくれた。


「・・・嬉しいけど、本当にわたしで良いの?」


「梨衣子『で』じゃなくて、梨衣子『が』良いんだ」


か細い声で聞き返してきた梨衣子へ僕の気持ちを伝え直した。


「わたし、ズルい女だよ・・・ゆうくんから告白して欲しいって他の男の人にバレンタインの本命チョコもどきを渡して焦らせようとしたんだよ」


「そんなの、僕がはっきりと梨衣子に信用してもらえる態度を取らなかったからだし、そんなのだってたった1回だ」


「でも・・・それだって・・・」


「りーちゃん。優斗くんはりーちゃんが良いって言ってくれたんだからそれは信じなよ。

 あたしなんかうらやましくてしょうがないのに何ごちゃごちゃ言ってるの」


「そうだよ、お姉ちゃん。

 朱音さんの言う通り、優斗さんはお姉ちゃんが良いって言ったの。

 朱音さんでも岩崎いわさき先輩でも私でもなくお姉ちゃんを好きだって言ってくれたの。その言葉を信じないでどうするの?」


煮えきらない態度の梨衣子に対して朱音さんと芽衣子ちゃんが後押ししてくれる。


「たゆ、梨衣子さんはたゆの事要らないみたいだし、私に乗り換えない?」


「ダメ!

 ゆうくんはわたしを恋人にしたいって言ったの!

 他の誰にも渡さない!」


陽希さんが冗談交じりで僕へ翻意を促したら梨衣子が怒り混じりの拒否と僕を渡さない宣言をした。


「じゃあ、梨衣子。返事はOKってことで良いんだよね?」


「うん!

 わたし、ゆうくんと付き合いたい!」


「ありがとう、梨衣子。

 これからもよろしく」

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