第73話

side 芽衣子めいこ


3年生の修学旅行が終わり、日常に戻った学校では新しい話題が持ち上がっていた。

卒業した岩崎いわさき先輩と優斗ゆうとさんが仲睦まじくふたりで居たという話で、わざわざ修学旅行が終わったその日にまっすぐ学校まで来て逢い引きしていたというもので、ある程度の事情を知っている身からすると真実と想像が入り混じっているせいで信憑性が増しているように感じるし、だからこそ上級生の話題だと言うのに盛り上がっているのだと思う。


以前の優斗さんは大井おおい先輩という学校随一のスーパースターが居たから目立たなかったけど、真面目で勉強もできてサッカーも上手なスポーツマンで優しいことが徐々に知れ渡って今年度に入ってから徐々にだけど注目を集めるようになっているし、相手の岩崎先輩にいたっては2学年離れているものの女子の先輩の中では美人として有名で、しかも事件が起こるまでは長いこと大井先輩の恋愛パートナーとして注目されていたこともあって達の学年でも知らない人が居ないほどの有名人なので、そのふたりの恋バナに注目が集まるのは当然のことだと思う。


しかし、優斗さんが好きな私としては気が気ではない。お姉ちゃんや朱音あかねさんが相手ならまだしも、人となりがよくわからない付き合いも幼稚園の時と卒業してからのわずかしかない岩崎先輩に優斗さんを持っていかれたくないという感情が沸いている。

当然のこととして優斗さんの相手なのだから優斗さんの意志で決めるべきことだというのは理解できてるけど、そんなものとは無関係のところで知らない人が恋人になるようなことは感情として拒絶しているし、昨日は朱音さんが先に帰ってしまっていて、そのあと岩崎先輩と優斗さんを二人にしてお姉ちゃんと先に帰ってしまっているので、私達姉妹のその行動が失敗だったのではないかという不安感も生じている。


居ても立ってもいられなくてお姉ちゃんと朱音さんにLINEを送って放課後に集まって相談することにした。

朱音さんによると既に優斗さんを中心に騒ぎになってしまっていて大変らしく、そう言った意味でも後悔が募ってくる。



私達2年生は優斗さんと直接交流がある生徒が少ないので、いくら注目を集めつつあるとは言っても元サッカー部の後輩とか去年委員会で一緒だったりしないとそもそもよく知らないという人も多いので、放課後には騒ぎはほどほどに沈静化してきていたし、そういう事情もあって私も優斗さんのことを尋ねられることもなくなっていた。


そして、お姉ちゃんと朱音さんと合流し、これから相談を始めようかという雰囲気になったところで校庭のほうが賑わしくなったので、確認をしたら校門から岩崎先輩が校舎へ向かって歩いてきている姿が見られた。

更に見ていると通りすがる生徒に話しかけられていて、にこやかに挨拶を交わしてもいる。


お姉ちゃんと朱音さんと目線を交わし、頷いてからお互い言わんとすることはわかっているとばかりに岩崎先輩の方へ向かって移動を開始した。

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