第71話

side 陽希はるき


いつもの自分だったら絶対にしなかったであろう滅茶苦茶な行動をしてしまったと思うけれど驚くほど微塵も後悔の気持ちはないし、むしろ今日行動しなかったら近い未来に後悔していたとすら思う。

恋愛なんて自分には縁がないと思っていたし必要もないと思っていたけれど、今ここにいたってはその気持ちがエネルギーになっていて暴走気味に動いている自分自身に驚かされている。


それにしたって圧倒的に不利な恋をしてしまったものだと思う。

初芝梨衣子はつしばりいこさんにその妹の芽衣子めいこさん、それともうひとりの幼馴染みの曽根井朱音そねいあかねさん。彼女たちは揃いも揃って可愛いし、性格だって悪くないと感じられる。

恐らくたゆが相手に選ぶつもりだったであろう梨衣子さんはバレンタインのチョコを大井おおい君へ渡すことでたゆを試そうとしたという誰が見ても間違っているように見えるするべきではない行動をしたけれど、それについては手痛い報いを受けたし、梨衣子さん自身が自分の罪を認めて謝罪したのだからマイナス要素と言えど長い付き合いの中での積み重ねの中のプラスをなかったことにするほどではないと思う。

たゆも自分の気持ちや持っている魅力に自信がなかったり、色々なことが起きたタイミングが悪くて梨衣子さんへの想いに迷いが生じてしまったようだけれど、落ち着いて考えればたった1度の、それもたゆを想っての行動なら許すだろうと思う・・・たゆはそういう人だ。

それに曽根井さんや芽衣子さんに引っ張られたということもあるけど、梨衣子さんが一度告白を撤回したのも長い目で見たら良かったように思う。

勢いで歪な感情を抱えたまま付き合うよりお互いの気持ちを整理させてから付き合う方が結果的には強固な結び付きになると思うし、やっぱり一番強力な恋のライバルになるだろう。

芽衣子さんや曽根井さんだって梨衣子さんに負けていない魅力があるし、たゆと築き上げてきた関係性だって相当に強固なものだと思う・・・あくまで私は幼稚園の時に互いの素性も、それこそ私なんかは性別すら知られてなかったくらいの薄い関係性だったのだから比べるのも烏滸おこがましい。


何もかもが不利な条件だらけだけれど今の状況には心が躍る。

私だって・・・今までは煩わしいとしか思えなかったけど・・・良く言われることが多い容姿をしているし、最後の最後まで諦めずに頑張り抜いてたゆの気持ちを奪い取ってみせる。


手始めにたゆと彼女たちへ宣戦布告をしようではないか。

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