第63話
side
ホテルの最寄り駅で
男子同士は交流を持たなかったみたいだけど、女子同士は仲良くなってあたしたちの班とりーちゃんの班の女子だけのグループになってそれぞれの班の男子たちから少し離れて1つのグループみたいになってる。
今回の事で収穫だったのはりーちゃんの友達とも仲良くなれたことで、りーちゃんという共通の友人を軸に班行動のアリバイ作りで協力しあって互いに応援し合うというところで息があったのが良かった。
りーちゃんのクラスでも誤解されていたのだけど、りーちゃんが優斗くんとあたし以上に歴が長い幼馴染み関係だと知られていなくて、最初は『彼女なのになんで協力するのか?』などと訝しまれたりしたけど、事情を説明したらちゃんと理解してくれたようでその点についても良かったと思う。
流石に
そんなりーちゃんの表情は芳しくなく暗い。対して優斗くんはどことなくスッキリしたとも受け取れるような表情をしていて何があったのか伺いしれないし、それぞれが何を考えているのか読み取れない。
「りーちゃん、ふたりきりでいい思い出つくれた?」
「うん、朱音ちゃんありがとうね。いい思い出がつくれたと思う」
「それなら良かったけど・・・何かあったんじゃないの?」
「え?どうして?」
「なんか表情が暗いよ」
「そうかなぁ・・・でも、そうかも。
わたしはゆうくんに選ばれないだろうって察したからそれが顔に出ちゃったのかも。
心配かけてごめんね」
「それは良いんだけど、どうして選ばれないって思ったの?」
りーちゃんは少し離れたところでうちの班の男子と話している優斗くんを一目見てから口を開いた。
「バレンタインからの出来事について改めて謝ったんだけど、もう許しているっていうのね。
たしかにその言葉の通り許してくれていて感情としても嫌われてはいないと思うけど、それは幼馴染みという友達関係としては問題なくても、恋愛的な好きという感情もなくなっているように感じたの・・・」
「そっか・・・優斗くんは積極的に人を嫌いになるような人じゃないし、りーちゃんなら尚更だけど、それでも恋愛対象は別ってことなのかな?」
「たぶんそんな感じだと思う・・・朱音ちゃん、ありがとう」
急に『ありがとう』と告げてきたりーちゃんに対して何でだろうと思って顔を見るとさっきよりも明るい表情になってた。
「急に『ありがとう』なんて言って、何なの?」
「だって、今の状況って恋のライバルとしては嬉しい状況なはずじゃない?
それなのに微塵も喜びを感じさせないで、ただただわたしのことを心配してくれたでしょ。
その朱音ちゃんの気持ちが嬉しかったの」
たしかに、りーちゃんのことが心配でりーちゃんが優斗くんの恋愛対象じゃなくなったらしいという話で喜ぶという発想があたしの中にあってもおかしくはなかったけど、あたしにとってはりーちゃんが大事でそれを置いて自分の恋愛が有利になったなどと考えることはあり得なかった。
「何言ってるの、りーちゃんは大事な親友だよ。たしかに優斗くんの事は好きだけど・・・それを言うと、あたしこそ謝らないといけないよ」
「それこそなんで?」
「あたしさ、
優斗くんの気持ちを振り回そうとするりーちゃんに腹が立って、優斗くんとの関係が少しこじれたら良いって思って『大井先輩にチョコを渡したら』って言ったんだ・・・実際には想像していたよりも酷いことになって・・・
更に優斗くんからりーちゃんへの気持ちが揺らいでいるのを察してめーちゃんと3人で告白をしようって言い出したのもズルかったよね」
「それこそ全部わたしが悪いんだよ。そもそも素直にゆうくんへ気持ちを伝えてれば良かったのに、ゆうくんから告白してもらいたいって欲張って変なことをしたんだから・・・」
あれからずっと後悔していたけど、今になって激しく後悔している。りーちゃんに腹が立った勢いで勧めるべきでない大井先輩へチョコを渡すように勧めた件と、優斗くんの気持ちが揺らいだからとめーちゃんと結託して巻き込んで告白させた事もするべきではなかったと思っている。
優斗くんに告白させたいなんて言うのはたしかに優斗くんを馬鹿にしているようでそれは許せないと憤ったけど、だからといってあたしがやったことはもっと悪辣でひどい裏切りだったと思う。
それでもりーちゃんはあたしに対して恨み言などは口にしないで出てくるのは自責の念ばかり・・・ここに来て思うのは、あたしがちゃんと全てを優斗くんに話してりーちゃんへの負の思いを払拭して、それでフラットな状況にしてからもう一度優斗くんに告白をしたいということだ。
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