第59話
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修学旅行2日目。今日は一日奈良の観光で、各班がそれぞれ奈良へ
あたし達の班は誰からも『◯◯へ行きたい』『◯◯を見たい』という要望がなかったので、移動に無理が起きないように有名な寺社を巡るスケジュールになっていて、そう言った背景だったので事前にトラブル時の準備などもしていたけど、電車が運転見合わせになるくらいの問題でも起きなかったら必要ないだろうと思っていた。
奈良に入って最初の目的地に着いてそれぞれが見学をしていたら、
「なんかね、他のみんなが気を利かせてあたし達をふたりきりにしてくれたみたい」
「そうなんだ。まぁ、僕らは付き合ってるって噂が流れてるしね」
もらったメッセージの画面を優斗くんへ見せながら話すとあっさりと納得してくれた。
「ごめん。それだけじゃないと思う。同じ班だけじゃなくてホテルで同室のみんなには、あたしと優斗くんは付き合っていなくてあたしが告白の返事を待っている状態で、この修学旅行で答えをもらえる様に頑張るって言ったんだ。
だから、それで気を利かさせてしまったんだと思うんだ」
「なるほどね。待たせている側の僕としてはコメントしづらいのだけど、そういうことなら今日はふたりで回ろうか」
「うん。あと、もし上手く合流できそうならりーちゃんと交代もしたいかな」
「たしかに、
そういう事でここからは優斗くんとふたりで奈良をめぐり、りーちゃんとも連絡を取って昼過ぎに交代する約束をした。
学校行事で制服姿とは言え、修学旅行という非日常的な状況で生まれて初めて来た奈良の街を優斗くんとふたりきりで巡っていると気持ちがふわふわしてくる。
そして、優斗くんもあたしを意識してくれているのか普段よりもよそよそしく感じる。これはこれで嬉しい。優斗君は春休みの告白まであたしに対しては距離を取ろうとしていたし、あたしの気持ちを知らなかったから仲の良い知り合い程度の距離感でもっと事務的に接していたから、その時のままだったらきっと事務的な感じだったと思う。
つまり、あたしを意識してくれているということが感じられる行動で、それが嬉しく思う。
そうこうしている間にお昼ごはんを食べ終わって、りーちゃんと合流する場所までやってきた。
「朱音ちゃん、ゆうくん、お待たせ!」
「ううん、全然待ってないよ。むしろりーちゃんが来なかったらずっと優斗くんと一緒にいられて良かったくらいだよ」
「朱音ちゃん、ひどーい」
「あはは、うそうそ。でも、待ってないのはホントだよ」
「そう?それなら良かった」
「うん、朱音さんの言う通り僕らも今さっき着いたばかりだから本当に待っていないよ」
りーちゃんはあたしのいった事へ半信半疑だったのか窺うような目線を優斗くんへ向けると優斗くんがフォローの言葉を紡いでくれた。
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