第57話
side
修学旅行の直前になって、ゆうくんと朱音ちゃんが付き合っているという噂が学校内で急に流れ出した。
その理由は
告白したことは事実だし、朱音ちゃんが言ってしまったのだってうっかりで悪気がなかった事だということを疑う気はないけど、事情をよく知らない人達が既成事実の様に話しているのを聞くのは気持ちが落ちてしまう。
中学校生活最大のイベントである修学旅行が目の前だと言うのに悶々としてしまっていて、しかも朱音ちゃんには言いたくないし必然的に
「それにしたって朱音ちゃんのうっかりのタイミングが最悪だよね。
わたし、修学旅行休んじゃおうかな」
「何言ってるの、お姉ちゃん。
今からだって
朱音さんだってきっと協力してくれるよ」
「そうかもしれないけど、今ゆうくんとふたりで行動したら朱音ちゃんという彼女が居るのにふたりきりになる空気が読めない女ってなるじゃない・・・」
「そこまではならないでしょ。
お姉ちゃんだって優斗さんと朱音ちゃんの幼馴染みとして知られてるんだし、仲の良い幼馴染みが同行している様に思われるって」
「そうかなぁ」
「そうだよ。お姉ちゃん、さすがに気にしすぎだって。
なんだったら私が朱音さんにお姉ちゃんと優斗さんがふたりきりで行動できるように協力してもらえる様にお願いするからさ、そんないじけてないでよ」
「うん・・・」
そう言うと、芽衣子はスマホを操作し始めた。
「もしもし、芽衣子です。今メッセージで送らせてもらいましたけど、お姉ちゃんがいじけちゃってて、修学旅行行きたくないとか言い始めちゃったんですよ。
・・・はい、そうです。
・・・それでですね。申し訳ないのですけど、うちのお姉ちゃんも修学旅行中に優斗さんとふたりきりで居られる時間を作ってもらえないかと思いまして・・・
・・・ありがとうございます。本当にうちのお姉ちゃんのためにすみません。
・・・はい、よろしくお願いします」
スマホの通話を終えると芽衣子はわたしの方を向いた。
「朱音さん、お姉ちゃんも優斗さんとふたりきりになれるように協力してくれるって。良かったね」
「ありがとう芽衣子ぉ」
「私は良いから、お姉ちゃんからも朱音さんにお礼を言ってね」
「うん。じゃあ、今からLINE送ってくる」
それから自分の部屋へ戻って朱音ちゃんにLINEを送ろうと思って操作し始めたら文字だと味気ないと思い直して通話発信した。
『もしもし、りーちゃん?』
「うん、わたし」
『めーちゃんを煩わせちゃダメだよぉ』
「そうだよね。お姉ちゃんなんだしね」
『そうそう』
「これから気を付けるよ。
それで、本題なんだけど朱音ちゃんありがとね」
『いいよいいよ。前にも言ったけど、班行動の時に迷ったふりしてりーちゃんをあたし達の班に入れようと思ってたし、ただりーちゃんが避けるからさぁ・・・って、噂のせいだよね。
あれはあたしが悪かったし、言いづらいんだけど気にしないでもらえると嬉しいかな。
本当にわざとじゃないし、噂だってクラスでは否定しているんだけどなかなか浸透しなくてね・・・』
「ううん。わたしが悪かったよ、朱音ちゃんごめんね。噂が流れ始めて朱音ちゃんの顔を見るのがつらくて逃げちゃってたから・・・」
『あたしこそごめん。これ以上謝りあってもきりがないからここまでにしよう。
それでさ、修学旅行で優斗くんとりーちゃんがふたりきりになる方法なんだけど・・・』
打ち合わせの通話を終えた。
朱音ちゃんは本当にわたしのために色々考えてくれていて、ゆうくんとふたりきりの思い出を作ることができそうで感謝しかない。
そして気を使って朱音ちゃんと連絡してくれた芽衣子にも感謝だ。
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