第56話

side 優斗ゆうと


修学旅行が近付いてきた。

班は4月に作っていて男子は元サッカー部の僕と仲が良いメンバーで固まり、女子は朱音あかねさんと仲が良い友達で固まっていたところで、僕と朱音さんだけが男女の垣根を超えて交流をもっていたのでそのまま結び付いたといった感じで、僕にとっては悪くなり様がない編成だし朱音さんや他の班員もみんな楽しめそうだと盛り上がってくれていてほっとしている。


修学旅行直前のホームルームは修学旅行の班行動の最終確認で「本当に移動時間に無理がない計画になっているか」や「もし不測の事態が発生した時にどうするか」の話し合いをしていた。


「うちの班は優秀な学級委員ペアがいるから問題はないよな」


「そうね。あかねはしっかりしただし、松下まつした君もあかね以上に細かく確認してくれてるから問題はないように作ってくれてるよね」


「僕らを高く評価してくれてるのは嬉しいけど、実際に京都奈良には行ったことがないし、どんなトラブルが起こるかなんてわからないよ。

 道に迷ってしまうかもしれないし、電車やバスを間違えてしまうかもしれないしさ」


「それはそうだろうけど、電車やバスの路線確認だけでなくてそれぞれの時刻表も確認して乗り遅れた場合や遅延した場合にどうするかまで調べて準備してくれてるじゃない」


「ほんとそうだよ。たぶん、そこまでやってるのはうちのクラスの班だけだぞ。

 うちのクラスだって松下がそこまでやってるのを見て真似した感じだし、他のクラスのやつにその話をしたら驚かれたよ」


「それそれ、でも今日のホームルームで真似するクラスは出てくるかもしれないな。

 さっきの昼休みにサッカー部の他のやつらとたまたま話したんだけど、細かくトラブル時の準備をするために時刻表を確認するって言ってたし、うちのクラス・・・っていうか優斗のやり方が広まっているのを感じたよ」


「ほんと、わたしも付き合いが長いけどさ、さすが優斗くんって思ったよ」


「おっ、あかねぇ。松下君を持ち上げてカノジョ気取りかぁ」


「何言ってるのよ!

 そりゃ優斗くんのことは好きだけど・・・って、ほんと何言わせるの!」


「おおっ、松下。曽根井そねいさんから愛の告白されてるぞ!」


「告白じゃないし!

 それに告白ならもうしたから!




 ・・・あっ」



それからは豊田とよた先生が何も言わないのを良いことにクラス全体で僕と朱音さんをひやかす状況になってしまって収集を付けるのが大変だった。

クラスの賑わいを何とか収めた後はもともと準備が良かっただけに最終確認も問題なく終わり、どこへ行くのが楽しみとかホテルで何をするとかそう言った話で終始してホームルームが終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る