第54話

side 芽衣子めいこ


優斗ゆうとさんが塾へ通うようになって一緒に勉強する機会もなくなり、必然的に顔を合わせる機会すらなくなっていて寂しい気持ちになっていた。

中間テストの初日、いつもよりずっと早い放課後に昇降口で優斗さんとお会いできた。


「優斗さん、こんにちは。なんか久しぶりにお会いした気がします」


「芽衣子ちゃん、こんにちは。たしかに僕が塾へ通うようになってから登校の時以外では全然会えてなかったよね」


「そうですよ。私、優斗さんにお会いできなくて寂しいんですよ」


「あはは、ごめんね。勉強が楽しくて、将来のためにもなるし今は頑張ろうって思って。

 今日はこれから帰り?良かったら一緒に帰らない?」


「もちろんご一緒させてください。

 話は戻して受験が大事なのは間違いないですし、高校へ進学してもその先には大学受験もありますから応援してますし、なんなら見習わないといけないなって思います」


そのまま優斗さんと私はふたりで並んで歩き出した。


「でも、芽衣子ちゃんを大事にしてないって言うのは良くないよね・・・」


「そんなことは・・・でも、もっと一緒にいたいです。気持ちはお伝えした通りですし・・・

 ところで、そのあと考えはまとまりましたか?」


話の流れに乗って思い切って1ヶ月半くらいおあずけになっていることについて尋ねてみた。


「芽衣子ちゃん達には申し訳ないのだけど、どうしても考えがまとまらなくて・・・塾へ通うようになったのも梨衣子りいこと一緒にいる時間が長いと僕の気持ちが全然わからなくなってしまうというのもあって距離を置きたかったのもあるんだ・・・あっ、これはできたら梨衣子や朱音さんには言わないでね」


「もちろん言いません!」


「ありがとう。でも、あくまで僕の身勝手なお願いだからあまり気にしないでね」


「いいえ。優斗さんが私を信頼して話してくれたことですから、お姉ちゃんであっても言いません」


「そこまで思ってくれて嬉しいな」


「それくらい私には優斗さんが大事なんです!」


「ほんと、その気持ちをちゃんと受け止めきれなくて・・・」


「それは承知で告白したんですから気にしないでください。

 それより、今日は朱音さんやお姉ちゃんとは一緒じゃないんですね?」


「うん、朱音さんはクラスの友達たちに一緒に勉強しようって誘われてそのグループと一緒に勉強するみたいで、梨衣子りいことは登校の時にしか会ってないよ」


そこからは他愛のない話をしながら帰り、その流れで優斗さんのおうちでふたりきりで夕方までテスト勉強を行えて緊張したけど嬉しかった。

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