第53話
side
でも、一緒に勉強したいから塾へ通わないでという訳にはいかないし我慢するしかない。同じクラスなのでそこまで欲張ってもという気持ちもある。
あたしはともかくりーちゃんはクラスが違うし落ち込み方がすごい。優斗くんから話を聞いた直後に会った時はこの世の終わりみたいな表情をしていて、これまでの事もあって本当にそんな風に感じてしまったのかもしれないと思うと、恋のライバル関係とは言え心配にもなった。
さすがに時間の経過とともに気持ちは落ち着いたようではあるけど、それでも4月の一緒に勉強していた時に比べるとよくなさそうな状態がずっと続いている。
「ねぇ朱音ちゃん・・・わたしも塾に通いたいけど、うちはそれほど裕福じゃないし、どうしたらゆうくんと一緒に居られる時間を増やせると思う?」
中間テストが目前に迫ってきている暑さが増してきた5月の中頃、あたしもりーちゃんも用事がなくて放課後に学校に残って勉強をしていたらりーちゃんが脈絡もなく問いかけてきた。
「それは無理な相談なんじゃない?
せいぜい時間がある時に一緒に勉強してもらう様にお願いするくらいしか・・・」
「それは今もお願いしていて、まだ2回しか時間をもらえてないし、その時間だってそんなに長くなかったんだよね」
「そうなんだ、先週混ぜてもらった時は貴重な機会だったんだね」
「そうだよ。朱音ちゃんを仲間外れにするわけにはいかないけど、二人っきりになれなくて複雑な気持ちだったんだから」
「それは悪いことをしちゃったね。
でもさ、あたしだって同じクラスでもそんなに一緒に居られてないんだよ。
友達との付き合いもあるし、クラスメイトの目は気になるし、
「そんなものなのかな?
ところでさ、春休みにゆうくんに告白したじゃない。それから朱音ちゃんが意識されてたりとかある?」
「なかなか痛いところを突いてくるね。正直なところ全然手応えはないよ。
ただ、優斗くんはそう言った感情を表に出さない性格だから『内心では気にしてくれているかも?』って少し期待しているかな」
そうは言ったけど、優斗くんからは微かに意識してもらっている感触がある。りーちゃんやめーちゃんに比べてどうかはわからないけど、手応えがないというのは誤魔化してる。
「そうなんだ。朱音ちゃんとゆうくんがお似合いだっていう話は時々耳に入ってくるし、周りから見てももっと大きな変化があるのかと思ってた」
「そうなら嬉しいんだけど、単純にそういう話が好きな人がこじつけてるんじゃないのかな?」
「たしかに恋バナは直接関係がない人のものでも楽しむ人はいるよね。それこそ違ってたけど
「そうだよね。りーちゃんは興味がないから知らなかったみたいだったけど、知ってる人は知っている話になってたよね。あたしも話だけは聞いたことがあったし」
「うん、だからダメ元でって・・・ごめん、自分からしたけどこの話は落ち込むからやめて良い?」
やはり大井先輩とのことはりーちゃんの気持ちに影を落としているようで流れで、名前を出しただけなのに表情が暗くなった。
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