第52話

side 梨衣子りいこ


新学期が始まり、受験を理由に部活を辞めて放課後はわたしとゆうくんの互いに用事がなければ一緒に受験勉強をする様になった。

ゆうくんはずっと優しくて、なんならバレンタインの前よりも優しく思えるくらいで毎回惚れ直す勢いでどんどん好きな気持ちが大きくなっていく。

その受験勉強はわたしとゆうくんだけでなく、タイミングが合えば朱音あかねちゃんが加わることもあるものの、朱音ちゃんの家は同じ学区とは言え少し離れているので、学校で勉強するときだけ加わる感じでわたしやゆうくんの家の時はまだ一緒に勉強したことがない。

逆に家で勉強している時は、芽衣子めいこが加わってくることが多い。

とは言え、受験勉強と言うよりは学校の勉強が中心なのでほとんど教え合うこともなく、ただ同じ場所で勉強するという感じ。

それでも受験生と一緒に勉強するだけでも気が引き締まって捗るらしい・・・それと芽衣子は言わないけど、ゆうくんと一緒にいることでよい緊張感があるのだろうと思う。わたしもそうだし。


ゆうくんとは一緒に勉強できているし、部活をやらなくなったので登下校も合わせやすくなってそれは良いのだけど、やっぱり同じクラスの朱音ちゃんが羨ましくて仕方がない。

学校ではゆうくんと朱音ちゃんは何かと一緒に行動することが多いそうで、4組の学級委員の名コンビとして評判になってきていてうちのクラス3組でもふたりがお似合いだという声を聞く。

それと合わせて、元々わたしが付き合っていて大井おおい先輩との一件のせいで振られて朱音ちゃんと付き合い出したのではないかという憶測を言う人もいて、それを聞くと胸が痛くなる。

もちろん事実でないこともそうなのだけど、わたしのあやまちがずっと消えずに残っているような感覚で、それこそ中学を卒業しても高校を卒業しても大学を卒業しても10年後も20年後もその先も永遠に付き纏ってきそうな恐ろしさがある・・・内容が内容なだけにゆうくんはもちろん朱音ちゃんや芽衣子にも相談できないし、この怖さという悩みをどうすることもできない苦しさを感じている。



ゴールデンウィーク・・・うちは芽衣子が部活で日程が連続した旅行に出かけられる状況でないことがあってどこへも行かず、ゆうくんも受験勉強に専念したいからと春期講習を受けた塾の連休中だけの特別講座に参加してほとんど会えなかったし、そんな事なら普通に学校があってほしいとすら思った。


そして、ゴールデンウィークが終わって数日ぶりにゆうくんに会うとゆうくんは塾に通うことにしたとのことで、放課後にわたしと行っていた勉強は塾がない時だけにして欲しいと告げられた・・・もちろんゆうくんがわたしを見捨てるつもりなんかないと思うけど、わたしはゆうくんに見捨てられたような感覚になって息苦しい感覚が強くなった・・・

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