第45話

side 優斗ゆうと


春休み中だと言うのに、曽根井そねいさん、梨衣子りいこ芽衣子めいこちゃんに学校の人気のない裏庭に呼び出されて3人に会って話を聞くと、3人が3人とも僕のことが好きで付き合って欲しいという。

梨衣子に至っては大井おおい先輩にチョコを渡すことで僕の気持ちを試すつもりだったらしい・・・なんとなく感じていた違和感はそれだったようだけど、それにしても虚しく思う。

僕は梨衣子のためになればと自分の想いを押し殺して協力しようと思ったのに、身勝手な気持ちで大井先輩も振り回そうとしたというのは穏やかではいられない。

結果的に大井先輩も増長していて問題を抱えていたから大きなトラブルに発展したけど、そんな事は後になってわかったことで、大井先輩が真剣に考える人だったらと思うと許せない身勝手さだ。既に梨衣子への気持ちがかなり冷めていて今更だけどもう少し距離を置いて様子を見たいと思う。

それはそれとしても、曽根井さんと芽衣子ちゃんに対してはどうすれば良いのかという戸惑いはある。


「えっと、曽根井さん、芽衣子ちゃん、梨衣子、気持ちを伝えてくれてありがとう。僕にとっては急なことで気持ちのすぐに整理ができないから時間をもらえないかな?」


「わかりました。私達は今すぐにでも振られる覚悟できているので大丈夫です」


「そんな・・・芽衣子ちゃん、振られる覚悟なんて・・・」


「優斗君、あたし達はそれだけの覚悟で今ここにいるんだ。それはわかって欲しい」


「曽根井さんも・・・」


「あとさ、優斗君」


「え?なに?」


「その『曽根井』さんって改めてもらえないかな?

 小学3年からの付き合いでずっと名字なの仲良くなれてないのかなって不安なんだよ」


「ごめん・・・その・・・」


「りーちゃんの事が好きだったから誤解されたくなかった?」


曽根井さんの指摘はその通りだけど、状況が状況なだけに今はそれを言いたくない。


「最初から曽根井さん呼びだったから変え時がわからなかったんですよ」


「じゃあ、変えてもらって良い?」


「・・・朱音さん?」


「うーん、できたらりーちゃんみたいに呼び捨てが良いんだけどなぁ」


「さすがに呼び捨ては・・・」


「まぁ、とりあえずいいわ。

 これからは『朱音』でよろしくね」


「うん、わかった」


長年『曽根井』さんと呼んでいたので呼び慣れないし、気恥ずかしくはあるけど、これと言って断る理由もないし、告白してくれた相手でもあるのでその好意に報いたいと思って呼び方を変えることを受け入れた。

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