第41話
side
これまでずっと僕には縁がない美人の先輩だと思っていた陽希さんに好意を持って接されると照れてしまうけど、接すれば接するほど幼稚園の時に仲良くしてくれていた『はるき』君のおもかげを感じるし、過去と未来が入り交じるような不思議な感覚になる。
「あのさ、サッカー部のこともだけど、
「それこそ関係ないですよ。だって、
「それだって、私が放置していた大井君が私と付き合っているという噂を利用して色々な女の子と関係を持って増長したという因果はあると思うの」
「それを言い出したら僕にだって責任はありますよ。
梨衣子が大井先輩へチョコを贈りたいと相談してきた時に大井先輩へ取り次いだのは僕ですし、陽希さんに責任があるというなら僕にもあります」
「ふふ、そうだよね。そんな事を言いだしたらきりがないよね」
「そうですよ。だから陽希さんは気にしないでください。
たしかに梨衣子が不名誉な噂を流されたり怪我を負わされたことは許せませんけど、それは大井先輩を責めるべきことです」
陽希さんは僕の言いたいことをわかってくれたのかそれ以上は自分を責めるようなことは口にしないでくれた。
しばらくふたりでサッカーボールで練習のようなことをしていたら陽希さんに疲れが見えてきたので休憩を入れるように言って休憩所へ移動した。
「ところで、さっき聞こうか迷っていたのだけど、たゆは初芝さんと付き合っていると聞いたことがあるけど違うの?」
「付き合ってはいないですね。
母親同士が公園デビューの時からの付き合いの幼馴染みで、僕は恋人同士になりたいと思うくらいに好きだったのですけど、梨衣子は大井先輩が良いとチョコを渡したわけですし、梨衣子は僕のことを恋愛対象には思えないんだなと思って諦めることにしました」
「そうだったんだ」
「そうですよ。流石に付き合っている彼女がいたらこうやって陽希さんとふたりで出掛けるのは躊躇してますよ。
まぁ、梨衣子相手だったら相談して許可をもらっていたと思いますけど」
「たゆは彼女がいないのかぁ・・・」
陽希さんとのお出掛けは僕自身も久しぶりに身体を動かせて楽しかったし良い気分転換になったと思う。
聞けば陽希さんは割りと近所だった・・・小学こそ違ったものの、中学は同じ学区で幼稚園も同じだっただけあって・・・ので家まで送ってそこで一人になった。
「ゆうくん!今帰り?」
陽希さんの家から自宅へ向かって歩いていると梨衣子から声を掛けられた。
なんとなく話しづらくて姿を見かけたら気付かれないように離れるようにしていたけど、陽希さんとの一日を反芻してたら油断して梨衣子に見付かってしまった。
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