第37話

side 梨衣子りいこ


修了式を迎え、わたし達の2年生の時間が終わった。三学期は嫌な出来事があったし、そもそもそんな事になった原因が自分にあったのだから振り替えると嫌な気分になってしまう。

気を取り直して、春休み中も会いたくてゆうくんに予定を聞いたのだけど、春期講習を受けることになっていて春休み期間中のほとんどが塾通いになるとのことだし、更に塾がない日でも先約がある日もあって会えるとしても春休みが終わる直前になるということでガッカリした。

仕方がないというわけでもないけど、次にゆうくんに会った時に驚かせたいという思いもあっておしゃれの練習をしたいと思う。もちろん高校受験の本番の学年になるのだし勉強も疎かにはできない。お母さんにお願いをすればゆうくんと同じ塾の春期講習を受けさせてもらえるようにも思うけど、うちは芽衣子めいこもいるしゆうくんと一緒に居たいというワガママのために無駄遣いをさせるわけにもいかないので我慢して自己学習だ。

わたしの所属している合唱部は大会で優勝を狙っているような部ではないので、春休み中の活動は週1回の合わせて2回だけしかないからその負担もそんなにはないけど特別仲が良い友達もいないので、なんなら高校受験に専念したいと辞めてしまってもいいかなと思っている。

そして、ゆうくんと一緒に勉強をしてもらって同じ高校を目指すのも悪くないと思う。



春休みが始まって数日経った・・・今日は欲しい物があってゆうくんが春期講習で通っている塾の近くのお店へ来たので『ゆうくんはここに通っているのかぁ』と思いながら建物を眺めていたら、ちょうど今日の授業が終わったところだったのか何人もの生徒が建物から出てきたので、ゆうくんも出てきたら一緒に帰ろうと誘おうと思って入り口が見えるところで様子を見ていたらゆうくんが出てきた・・・見知らぬ女の子と楽しそうに話しながら。


おそらく塾で席が近かったか何かで少し仲良くなったとかという事だと思うけど、それでも推測の域から出ず不安でしょうがない気持ちになったので見つからないようにゆうくん達の跡をつけて行くことにした。


ゆうくんが女の子のことをどう思っているのかは読み取れないけど、女の子の方はほぼ間違いなく好意を抱いている様に見えるくらいには積極的にボディタッチをしている。本当は今すぐにでも駆け寄ってふたりの間に割り込んで邪魔をしたいけどゆうくんにきらわれたらいやなので、ここは我慢して様子を見続けることにした。

結局のところ、ボディタッチが過剰な気がするくらいで特に何もないままゆうくん達は途中で別れた。


女の子と別れて少し経ってからゆうくんに近付いて声を掛け様と思っていたら、ゆうくんが突然駆け出してしまったので声を掛けることができなかった・・・わたしに気付いてなかったのなら良いのだけど、わたしに気付いて避けるつもりで走っていったのだとするとなんて考えると怖くなる・・・

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