第29話

side 朱音あかね


りーちゃんが学校へ来なくなって数日。

全校集会から学校内での雰囲気は大井先輩やりーちゃんについて話をするのがタブーの様に扱われていて、気になっている人でも核心に触れるような話をしなくなっていて噂話は聞こえなくなってきている。

そんな中、事実として大井先輩とよく一緒にいた友達と思われる男子数人が停学や謹慎になったということで登校しなくなっているという話だけはひっそり伝わってきた。

ちなみに、大井先輩やその友達たちの相手の女子も状況に応じて停学や謹慎になっていたりこれからなる予定らしいけど、内容と状況が内容と状況だからか誰がその対象なのかわからないように対応されているようで、時期をずらしたりインフルエンザなどの病気を装ったりしているらしい。特に大井先輩の場合は相手が浮気のていで秘められていたので、あからさまだった人以外はわからないらしい。

なぜあたしがそれを知っているのかと言えば、当事者の一人である伊藤いとう先輩から教えてもらったからに他ならない。伊藤先輩も大井先輩と性交をしていて、それを否定できず3日の謹慎を受けているらしいけど、表向きにはインフルエンザで休んでいる扱いになっているとのこと。

また伊藤先輩は今回の1件で大井先輩への愛想が尽きたそうで、変な絡み方をして申し訳なかったと謝罪してくれていて、あたしとしても謝ってもらった以上はわだかまりはない。あとは、謹慎明け直後の受験に頑張って欲しいと思う。



今日は特別なこともないまま放課後を迎えた。

部活よりも優先するような用事もなく、いつもの様に部活へ行こうかと思っていた矢先にめーちゃんが慌てて駆け込んできた。りーちゃんが暴漢に襲われて怪我をしてしまい病院へ運び込まれたというのだ。その話を聞いて急遽部活を休み、めーちゃんと病院へ向かうことにした。


病院へ着くとりーちゃんは病院の服姿が痛々しかったけど笑みを浮かべる余裕はあるようで安心した。話を聞くと買い物へ出ようと家を出たら大井先輩が待ち構えていて襲いかかられ、何度となく蹴られて身体中に打撲の痣ができてしまっているらしい。とっさにカメのようにうずくまって頭も手で抑えていたから脳や内臓といった重要な部位への損傷はあまりなく明日もう一度検査をしたら退院できるそうで良かったと思う。

話が終わったくらいで警察の人が事情聴取に来たので、あたしは入れ替わるように帰宅した。


家に帰ってから伊藤先輩にも大井先輩がりーちゃんを襲った件をLINEで送っておいたら『本当にどうしようもないクズだったのね。諦めがついたわ。ありがと』と淡白な返答が送られてきた。

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