第25話

side 梨衣子りいこ


自分のくだらない願望で遠回りをしてしまったけど、今日こそはゆうくんに告白をしようと思って意気込んで登校したのだけど、学校へ着くとわたしが大井おおい先輩とセックスをしていたという話が広まっていてそれどころではなくなっていた。

土曜一昨日のうちに大井先輩とは別れると言ったし、そもそもそんな事実はなかったのに今も付き合っていてしかもそんな関係になっていると言われている事が理解できなかった。

もちろん尋ねられたら全部否定し、話を聞いてくれる相手であれば先輩にはお付き合いできないとちゃんとお断りしたことも言っていたのだけど、それらが焼け石に水という感じで噂が学校中を覆ってわたしの否定は全然伝わらなかった。


お昼休みには先生から呼び出しを受けて面談をし、そこでも先輩との経緯を説明して噂が嘘であると説明をしたものの、わたしと大井先輩で主張が食い違うためにわたしの言うことを鵜呑みにはできないと言われてしまった。救いは主張の食い違いがあるからどちらも信用できないということで、噂を全面的に信じてわたしが糾弾されるようなこともなかったことくらい。

結局今の状況ではわたしが雰囲気に呑まれてしまうからと今週いっぱいは学校を休むようにと勧められてお休みさせてもらうことにした。


学校を出てからすぐに朱音あかねちゃんに話がしたいから家へ来て欲しいとLINEのメッセージでお願いをしたら了承してくれたので、今日のうちにわたしに何があったのかを話ができるし相談もできると思いほっとした。



学校が終わった時間が過ぎて程なく朱音ちゃんが来てくれた。


「大丈夫?」


「うん。先生は結論を出してないけど、食い違う主張の片方だけを鵜呑みにできないってことだから、ちゃんと調べてもらえば先輩が嘘をついているってわかってもらえると思うし、それがはっきりすれば噂もなくなると思う・・・」


「そうなんだ。そうなると良いね」


「うん・・・でも、何で先輩はこんな嘘を広めたんだろう?」


「りーちゃんに振られた腹いせとかかなぁ?」


「腹いせ?」


「だって、大井先輩ってモテて岩崎いわさき先輩と付き合っている噂の影ではけっこう色んな女子と付き合ってたみたいだし、最初のデートで振られたというか付き合ってすらいなかったと言われたのがプライドを傷つけられたと思ったんじゃないかな?」


「そっか・・・でも、だからって・・・」


「でもさ、それはりーちゃんが悪いところもあるよね。その気もないのに優斗君に嫉妬させたくてバレンタインチョコなんか渡したんだから」


「だよね・・・」


正直痛いところを指摘されて返す言葉も浮かばない。それでも朱音ちゃんはわたしの言葉を待っていてくれたので続けた。


「こんな事になっちゃったけど・・・」


「こんな事になっちゃったけど?」


オウム返しで聞き返してくれた朱音ちゃんに今日しようと思っていたことを言葉にして続けた。


「ゆうくんに全て話して『好きです』ってちゃんと告白しようと思ってたんだ・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る