第17話

side 朱音あかね


休日を利用して買い物に出掛けていたところで、大井おおい先輩とデートをしているはずのりーちゃんから通話の着信があった。

普段なら連絡はLINEのメッセージで送ってくるりーちゃんが通話してきたということは何かあったのだろうと思い慌てて応答した。


『朱音ちゃん・・・』


「どうしたの?何があったの?」


りーちゃんの声音から泣いている事が察せられたので端的に状況を尋ねた。


『先輩が・・・先輩が・・・』


それでも泣き続けるばかりで要領を得ないので、今いる場所を聞いてその場所まで向かうことにした。




「休みなのにごめんね・・・でも、ありがとう」


「いいよ。りーちゃんの事が心配だから来たんだし、自分のためでもあるから気にしないでよ。

 立ち話も難だし、落ち着ける場所で話そ」


りーちゃんは合流するまでに落ち着いたようだけど、それでも表情はまだ暗いし目の周りには涙の跡が残っていて大井先輩と何かあった余波は残っているよう。



「それで大井先輩と何があったの?」


他の人に聞かれないようにカラオケ店に入り、入店時に注文したワンドリンクが届いたところで本題について尋ねた。

途中詰まりながらもりーちゃんは一通りの話をしてくれ状況はおおよそ把握できたと思う。

要はウラの顔を早くも覗かせたのだ。

中学生でありながら少なくない女子と事をしている大井先輩はりーちゃんにもそれ要求し、りーちゃんは想像もしてなかったのでそのまま拒否して立ち去ったという事らしい。

大井先輩のウラの顔を知っているあたしだっていくらなんでも仮のお付き合いの状態でしかも初めてのデートでそれは早いと思ったし、予備知識なくいきなりそんな事をされたら泣きたくなることもわかる。

優斗ゆうと君を馬鹿にした『告白をさせたい』なんて事を言ってたりーちゃんにムッとしていたけど、こればかりは同情したし、こんな事なら最初から唆さなければよかったと反省した。


とりあえず今日のところは大井先輩に謝罪のメッセージと価値観が合わないから付き合えないとLINEで送っておいて、週が明けたら改めて学校で直接謝りに行き、それにはあたしも付き合うことにした。


「朱音ちゃん、本当にごめんね・・・わたし、なんて馬鹿なことしたんだろう」


「ホントそうだよ。まぁ、これに懲りたら優斗君を試すようなことはもう止めなね」


「うん・・・そうだね・・・先輩にも悪い事しちゃったし・・・」


りーちゃんは方針を決めたことで気持ちが落ち着いた感じだったけど、現実が見えて今度は自己嫌悪で落ち込んでしまった。

少し痛い目を見ればいいとは思っていたし、りーちゃんと優斗君の関係性がそれで揺らぐならアプローチしようとも思っていたけど、さすがにここまで悪い形で転ばれるとあたしも気が引けてきてしまう。

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