第16話
side
恋愛物の映画を見ることにしたのだけど、席に着いてシートの肘掛けに腕を乗せると先輩はわたしの手を掴んで恋人繋ぎをしてきた・・・デートなのだしそれくらいは当たり前のことなのかもしれないけど、わたしにはそれが苦痛で今すぐにでも手を振りほどいてしまいたかった。
上映が終わるまでの間その手を離してくれず、それが気になって映画の内容は全然記憶に残ってない。
「楽しくなかった?」
「うーん、緊張しちゃって良くわからなかったです」
自分でも苦しい言い訳だと思うけど、楽しいかの質問へはそれくらいしか返し様がなかった。
「疲れた?どこかで休むか?」
「はい、お願いします」
先輩の気遣いの言葉に肯定の返事を返すと、人の目がない所が良いだろうと個室のあるインターネットカフェにへ連れ、カップルブースに入った。
本当はすごく抵抗感があったけれど、調子が良くない上に気遣いに対して失礼だと思って臆している間にこの狭いシートに二人きりになってしまった。
先輩と肩と肩がくっついていて気持ちはちっとも休まらず何とか気を紛らわせようと思い付いた会員証を持っていたことについて尋ねてみた。
「そう言えば、なんで個室に入れたんですか?」
「ああ、これか。会員証は高校生なら作れるから、高校の知り合いの名義で作ったのをもらったんだよ」
「そうだったんですか・・・」
「こういう空間、良いだろ?
女の受けが良いんだよ」
「わたしはあんまり・・・」
そう言うわたしに先輩はいきなり顔を近付けてきたので思わず
「いてっ!」
「何するんですか!」
「恋人同士なんだしキスくらい良いかと思ってよ」
「良くないですよ!
わたし達まだ仮のお付き合いですよね!」
「仮とか関係ないじゃん、付き合っているんだし」
「お試しだからと付き合ったはずです!
先輩がそんなつもりなら、お付き合いできません!」
「おいおい、そんな怒るなよ」
「怒ります!
ファーストキスを好きかもわからない状態でこんなムードもないところでされそうになったんですから!」
「それは悪かったって。今まで付き合った女はその日にでもセックスしたりもあったからよ」
「セッ!?!?
やっぱりわたし、先輩とは付き合えません!
もうこれで帰ります!」
いきなり性行為を前提に置く人となんて付き合えない!と言うことで、一方的だけど別れを告げて去ることにした。
先輩は引き留めようとしたけれど、お店の中ということもあり目立つこともできないのでわたしだけ逃げるようにお店をあとにした。
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