第10話
side
りーちゃんと
大井先輩が仲の良い人達に自慢気に話しているのが発端らしく、あたしも朝のうちに聞いてきた何人かには『詳しくは知らないけど昨日バレンタインのチョコを渡したらしいよ』と答えているので、それも噂話が流布するのに一役買ったと思う。
りーちゃんには悪いけど、あたしはこの噂を程よく広めて学校内で周知されることで既成事実として扱われ、りーちゃん本人が否定しても恥ずかしがっていると認識される様になる事を期待している。
そしてこの噂の真偽がわからない状態になって、その事が発端で優斗君がりーちゃんから距離を置くようになってあたしの入り込む隙ができたら良いと思っている。
優斗君はりーちゃん一筋であたしに対しては明確に一定の距離よりも近付かせない様にしているところがあって、優斗君のその生真面目とも言える誠実さが好ましいと思うけど、それが理由で距離を置かれてしまうのは寂しく思うし、それ故にりーちゃんに対して恨めしく思うところだったりもする。
そして、優斗君はりーちゃんと一番仲が良い男子として密かに有名だったから出歯亀の生徒達も流石に気を遣って直接尋ねる蛮行を行わなかったようだけれど、優斗君と近しいサッカー部のチームメイト達が心配して聞いてくれたのがきっかけで知ったらしい。
優斗君が尋ねると逆に相手から質問され返すこともあったとのことだけど、気を遣ってそっとしていても気になる話題について対象の優斗君から質問されたら逆に尋ねたくなるのは気持ちもわかるし咎められない。
優斗君と話をして教室へ戻ると、りーちゃんが居心地悪そうにあたしの席に座って待っていた。クラスメイト達も触れてはいけないと思いつつも視線を向けてしまっている様で異様な空気感が漂っている。
「ごめんね、朱音ちゃん。ちょっと話をしたいんだけど、良いかな?」
「それは構わないけど、場所を変えた方が良いよね?」
「うん、そうしてもらえると助かる」
りーちゃんを連れてさっき優斗君と話をした
「朱音ちゃん・・・わたしどうしよう・・・」
「大井先輩と付き合ってるって話のことよね?」
「うん・・・」
「あたしも情報が入り乱れててちゃんとした状況がわからないのだけれど、今りーちゃんの状況はどうなっているの?」
「朝から何人もの人達に色々言われてて『うらやましい』とか『
それと先輩から明日か明後日の土日のどちらかでデートしようって誘いが来てる」
「うらやましいは人の気持ちだからどうにもできないけど、大井先輩と岩崎先輩との関係は嘘だったんでしょ?
ならそれは言い返せばいいじゃない。
あと、デートの誘いは仮にも付き合うことにしたんだし1回はしないとダメなんじゃないかな?
心の準備ができないなら、理由をつけて明日明後日は断って来週末に引き伸ばすくらいはしても良いと思うけど」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます