第128話 ちょwおまww 桃配ってる場合かよ!?
今回の話に先に補足説明をすると、桃配山は関ヶ原において、
徳川家康が天武天皇のエピソードから縁起が良いと本陣を置いた場所です。
家康は桃配ったかどうかわかんないですけどw
ちなみに氏政が配っていたのは信濃・川中島産、川中島白桃です。この物語内では史実より早く発見して栽培開始に至っています。
川中島白桃、美味しいですよ♪
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天正3年(1575年)9月15日、早朝。
現在の季節で言ったら10月の夜明け直後、まだ動くには
目が覚めて仮眠を取っていた陣屋の外に出てみると霧雨が降っており、数メートル先も見えないような霧がかかっていた。
この状態では敵の陣容も全く分からないハズだが、だからと言って悠長に夜が明けて霧が晴れるまでじっとしている間抜けは敵にも味方にもいない。すでに兵や忍びは偵察に出たり、また偵察から戻って得た情報を共有するためにと声を掛け合いながら動き回っている。
その中で1つ、不穏な
「おう、寿四郎殿。ちょうどそろそろ、はま家と当家の主だった者にも声をかけて軍議を始めようと思っておったところじゃ」
陣幕をくぐるとそこには、実質東軍の大将を務める
「義輝将軍は? まだ起きていないのか?」
「我ら将が揃った頃合いを見計らい、将軍様には声を掛けようと思っておったところでございます」と氏照が言う。
「そうそう! この桃配山というのは天武天皇が壬申の乱の際、全軍に桃を配って勝利を祈願したことで名が付いた縁起の良い土地らしくての。ちょうど皆に桃を配っておったところじゃ。義輝将軍の所に行くなら持って行ってくれんか? それとコレ寿四郎の分な」
よく見るとこの陣幕の全員が食べかけの桃を手にしており、陣幕の中には甘い匂いが立ち込めている。いや、俺の不安が的中してたとしたらお前、呑気に桃配ってる場合じゃないと思うんだが。
「なんじゃ? 要らんのか? 古来より朝の果物は金、と申してな。力がみなぎるぞい! ワシなんぞもう2つ目……」
「いや、それどころじゃなくて! 俺の思い過ごしなら良いんだが、将軍が本陣で寝てることはちゃんと確認したんだな!?」
俺の言葉に全員がハッとなり、ガタガタと立ち上がる。そしてそのまま義輝が寝ていたはずの本陣へ。
当たってほしくなかった俺の不安は見事的中し、陣幕の中に足利義輝はいなかった。行き先を尋ねてもハッキリとは答えない将軍お付きの者を力づくで問いただすと、つい先刻、急ぎで駆け込んだ近習から何らかの報告を受けると慌てた様子で十数騎の旗本衆を連れ、南の斜面を騎馬で下山していったという。
「我らへの報告は何もなかったのか!?」
「そ、それが……事を大きくしないため誰にも他言無用であると将軍様より直々に言われておりましたゆえ」
氏政に胸ぐらを掴まれ締め落とされそうな勢いで青い顔になっているお付きの者の言葉に不安はさらに高まる。
「氏政、嫌な予感がする! 俺はこのまま南に向かうぞ!」
「寿四郎!! 当家からもすぐ動けるものは向かわせる! ワシらは全軍に下知せねばならぬ身ゆえ」
「元より承知だ! ウチの軍も任せたぞ」
咄嗟に判断し、全権を氏政に任せ急いで本陣の南側へと向かった。そこに数人の駆け足が後に続く。
馬を用意するのももどかしいと徒歩で斜面を下り始めたが正解だったようだ。陣を敷く前に南側斜面は雑木を切り開いていなかったようで、馬で駆け下るよりは圧倒的に早そうだ。このまま平地に出る前に追いついてくれたなら良いが……
ぬかるんだ斜面に足を取られ、木々の枝で浅い生傷を付けながらもなんとか泥だらけで斜面を降り切ったその時だ。
前方からは刀と刀がぶつかり合う甲高い音と怒鳴り声が聞こえ、霧の奥で騎馬に乗っていると思われる高さの人影が次々と馬から転げ落ちるのが霞んで見えた。
急いで駆けつけるとそこには……気勢を挙げて向かってきた騎馬武者を全く物ともせずに切り払う、漆黒の甲冑に身を包んだ見覚えのある男の背中。
見間違えるはずがない。アレは……織田信長だ。
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