第64話 リアル鬼と和風エレクトリカルパレード
作者・川中島ケイと浜寿四郎は
能登の復興を全力で祈念しています。
七尾に和倉温泉に穴水町。復興したら
いつか行ってみたいですね。
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金沢陣屋を出発して17里(約68キロ)
能登半島の付け根の外海側を進んで途中から内陸に入り、七尾城の西・徳田という地に俺達は到着した。そこまでの道のりは山と山に挟まれた比較的平坦で長閑な田んぼが広がる農村が続き、そこに住んでいる人々も穏やかな印象を受ける。それに進軍に対してもっと一向衆や地元の国衆の抵抗を受けるかと思っていたけれど、畠山親子がこちらにいる事も影響しているのか、ほとんどそれらしい抵抗も無かった。
「そうであろうそうであろう♪皆、ワシらが返り咲くのを期待しているという事じゃ」
畠山義続がドヤ顔で自慢そうに言うが、本当にそうだろうか?
俺達の行軍に出くわした民百姓の感じからは歓迎ムードというよりもよそよそしい雰囲気を感じる。返り咲くのを待っているというより、一万を超える軍勢と派手な物々しい格好の一団を見て『ヤベーのには近づかないでおこう』と思った方が本音なのではないだろうか?田舎は特にそういう風潮は強いっていうし。
徳田の開けた場所からは東に大きな岩山の上に石垣が築かれた七尾城が聳え立ち、その北には七尾湾に面する平野の城下町・七尾が見える。確かに城下町と城とを分断し、この山を登って攻め落とすとなると容易な事では無いし相当な戦力が必要そうだ。
敵も兵力で劣る事は理解しているからか、山を下りてきて迎撃してくる感じは無いようなのでここに朝倉軍は本陣を設置。ここからは、俺達4千は別働部隊として能登半島を北上することになる。
「まあワシ達がド派手にブチかまして終わらせてやっから、お前らは物見遊山のつもりで付いてきたらいいじゃろう」
歩く和風クリスマスツリーこと
「景連どの、分かっているとは思いますが我らはこの地の内乱を治めに来た身。くれぐれも略奪や乱暴狼藉は……」
「んな事ァわぁーってるよ! 蹴散らしてくんのは反逆者の重臣どもと一向宗の坊主だけ。そんで良いんだろ義景?」
釘を刺そうとした当主の義景の言葉を遮る。いやそんな『戦と言えば略奪狼藉が醍醐味だぜヒャッハー♪』て言いそうな格好で言われましても信用に欠けるというか……義景さんが頭抱えるの、分かる気がするわ。今と違ってオ〇人事とか無いもんなぁきっと。
七尾の城下町を西に迂回して七尾湾の南岸・
湾の内側なのもあってか春先の海は波も無く穏やかで、海水の透明度も高い。そして色々な魚が生息しやすい環境らしく「天然の生け簀」と呼ばれるぐらい海の幸が豊富なんだそうだ。
「この辺りでは本当に獲れる魚の種類が豊富で、サザエやアワビといった貝類やアジ・サバ・カワハギ等の近海の魚が鮮度の良いものが手に入りやすいとの事です。中でも『石崎エビ』と呼んでいるこの辺にしかないエビは絶品なんだとか」
いつの間に漁師から聞いてきたんだか軍監がこの辺のおススメの魚を教えてくれる。プリプリの新鮮な生エビのお寿司とか考えるだけで涎が出そうになるよね。
「そういえば寿四郎どのは『寿四』という酢を混ぜた米に生の魚に乗せた料理を振る舞うのがお得意だと聞く。この戦が終わったら是非一度味わってみたいものよ」
お、景連さんも知ってるって事は寿四はこっちでも有名になってるのか。確かに俺もこの戦いが終わったら能登の美味しいお魚で寿司は食べてみたい。しかし‥‥
「アレは当家独自の製法でしか作れないものでして……再現するとしたら貴重な酢と砂糖が必要になるので難しいかと」
「ほう、酢と砂糖とはまた豪華だな! だが我が朝倉家は足利将軍家を接待する機会もあるゆえ、一乗谷なら用意できるであろう。持って来させよう」
まさかこの時代で超貴重品の酢と砂糖が用意できるとは……恐るべし朝倉家。
「ようっし! 美味いものが食べられるとなると高揚してきたわい! 皆の者、我に続けぇ!! 」
テンション上がりまくった景連さんが穴水城に全力で馬を走らせると、同じく馬に跨った真柄兄弟も後に続く。重臣・
いやそりゃあさ、馬も合わせたら3メートル近い鬼みたいなのが柱と見間違う位のバカでかい薙刀振り回して突っ込んできたらマトモに戦える奴なんて居るわけがないよな。それがなんと2騎も居て先導しているのが魔界の使者かってぐらいの仰々しい鎧武者なんだからもう、意味不明だよ。
「ちっ、なんと歯ごたえの無い。次じゃ次ぃ!! 」
叫ぶが早いか、落とした城の戦後処理は徒歩の足軽隊に任せ、今度は輪島山中の城・
「この時間から北上すれば騎馬だけなら夕暮れ過ぎには城に辿り着けよう。敵もさすがに穴水城が落ちた報を受けた当日中に攻め込まれるなど思っておるまい。そこを叩くのよ! 付いて参れ!! 」
そう豪快に笑って馬に跨ると鬼チームはもう半里近くも先、山道の入り口に差し掛かっていた。兵法もへったくれも無い、脳筋プレイが過ぎると思うんだが。
結局その日の日暮れから2間後くらい、おそらく天堂城にお住まい『だった』
「よし! 今日はこんな所で良いな。今日はこのまま酒盛りとするぞ! 城の蔵探して酒持って来ぉい
!!」
戦の後始末もそこそこに城から酒を探して引っ張り出してくることを命じる景連と真柄兄弟の鬼トリオ。こんな方々に追われる側はたまったモンじゃないよな、そりゃあ。
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