第7話 シーフード家族なのにトリッキーヘッドが居ないとかどういう事なの?

この物語はフィクションです。

登場する名将は実在の人物・団体などとは

一切関係ありません。

ついに戦国の華・バトル編開始ッ…する??かも!?

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 俺が浜家の砦に戻ってから10日後。


 この地域だけでなくこの時代の日本ひのもと中を震撼させるニュースが史実通りに伝えられた。


「尾張国桶狭間にて織田本隊の奇襲により、

 今川本軍壊滅!!! 

 今川義元殿お討ち死に!!! 」


 この大ニュースに人々は動揺し、特に今川家のお膝元であるこの駿河は

これからどうなるのかと誰もが怖れ慄き、不安に苛まれていた。


 たった一人、元々それを知っていた俺を除いては。


「わ、若!!こっここっこっこここここれからどうすれば!!! 」

「落ち着け多羅尾!!今はとにかく父と兄上達がどうなったかだ! 」


 慌てすぎて鶏のようになっているタラちゃんをとりあえず落ち着かせる。


 史実として俺が知ってるのはこの後、蹴鞠王子が義元公の後を継ぐ。

 だが家臣たちの離反が相次いで、その中でも大きい出来事として三河の徳川家康(今は松平元康を名乗ってる)が独立。

 最後は織田の協力を得た徳川と、同盟を解消した武田の双方から攻められて、この辺りも徳川の領土になるんだったと思う。


 だが今川家の家臣がそれぞれどうなるかまでは詳しくないので俺は知らない。

 特にこの時代に飛ばされるまで全く知らなかった「武将以下の国衆って勢力」の1個1個なんて全く分かるわけもない。

 ウィキ〇ディアにも無いし。


「父上、今戻りました。」


 そう思っていると後ろの方で気配がして一人の女性が立っていた。

 2年経って少し背格好は変わっているがコイツの顔は忘れない、小春だ。


「小春、してどうであった?」

「……我が殿を含む浜家一隊は矢作川を渡河する今川重臣の楯となって反旗を翻した三河衆の追討軍によって壊滅。寿太郎さま、寿一さま、浜太郎さま全員お討ち死に……との事です」


「くっ……まさかそのような事が。

 あの三河の恩知らずどもがっ!!! 」


 タラちゃんが報告を聞き、肩を落とす。

 小春も唇を嚙みしめている。

 誰だってそんな状況は考えてなかったんだろうな。


「あの……それでこれからどうなるんだ?」


 この状況でどんな態度を取ればいいのかも分からないので、とりあえず冷静に聞いてみる。本当なら親や兄や配下を失くして悲しんだり怒ったりして動揺する場面なのかもしれないが、残念ながらほとんど面識のない連中しかいないのでそういう感情が湧いてこないのだ。


「……若!? このような時でも感情を表に出さずに冷静にこれからの事を考えられるとは!! なんとご立派な!! 」

「父上、若君も。ご報告がございます」


 多羅尾の後ろに気配もなくまた一人の女性が現れる。

 小春に似ているがこちらは髪が短く切り揃えられているのでなんとなーく別人なんだとわかる。しかし、よく似てるなぁ。


「この混乱に乗じて磯野家が自身の館に兵を集めているようです。さらに当家にこのような文が」


 その場で渡された文を読んでみる。

 そこには大きく汚い平仮名の多い字で簡潔な内容が書かれていた。


「今こそ東するがしゅうは当家のもとにまとまるべし。

 はま家、うら家も当家にしたがうのがよろしかろう いそ野かつ氏」


 この内容なら親父の書いた文はよっぽどマシな手紙だったんだな。やはり識字率は低いのか。

 という問題はともかく、この手紙で磯野家とやらが言いたいのは、この地域の国衆はまとまった勢力として機能するべきだから自分達に従えと言ってきているらしい。


 浜家の兵力が80に対して磯野家の兵力は100名を超えるそうだ。

 しかも今回の従軍に付いていって壊滅状態の浜家に対し、磯野家は今回従軍していない。


 つまり30対100になった状況を分かって従えと言ってきてるのか。小賢しい事を考えやがる。


「これを断ればどうなる?」

「間違いなく武力で潰しに来るでしょうな」

「それは困るが……どうするにしても状況を整理しないとだな。

 多羅尾、ウチの残った者を全員集めてくれ」


 状況がカオスすぎてよく分からんが、間違いなく言えるのはシーフード家族なんぞの手下になるのはまっぴらだって事だ。


 砦の広間に集まったのは30人ぐらいか、2年前に比べたら随分と閑散としていた。ほとんど討たれたのだから仕方ないか。

 タラちゃんから親父と兄上が亡くなった事、そのタイミングで磯野家から吸収合併の話が来ている事が告げられる。


「どうすんだよ!! 磯野っつったら一大勢力だろ!?

 今ウチにいる連中でどうにかなんのかよ!! 」


「左様、磯野家は現当主の波兵衛どの、嫡男の勝氏どのが居られる。

 どちらも猛者と名高いですぞ」


 上座に座る二人の男が発言する。一人は粗暴な感じが前面に出ており、それに対してもう一人は冷静で動揺が感じられず対照的だ。


「加えて磯野家には分家に波野頼助よりすけという猛将もおります。

 その3名に加えて兵力は100、それに対してこちらは」

「兵力じゃ劣るがこっちにはこの天下の猛将、

 青野佐馬之介あおのさばのすけ様がいるぜ! 

 俺様が全員指揮して突撃すれば兵の数の不利なんざ大して」

「カマスじゃあるまいしそんなモン、囲まれて袋叩きに決まっておろう!

 多勢に無勢の不利を覆すには兵力の冷静な分析と策が必要……」

「そーーんなコト言って軍監ぐんかんさんは戦で先陣切ったコトあんのかね?

 それこそ机上の空論だろーが!! 」

「なにをーこの脳筋突撃魚がーーー」


 この二人は言動も対照的みたいでいきなり口論が始まる。


 どうにもサバノスケと名乗ってた方は短絡的で猛将型、軍艦と呼ばれた方は頭でっかちで軍師型らしい。


 んで敵方は国民的人気アニメに似た名前のトリオか。呼び名が特徴的で覚えやすくて助かるな。


 二人は脳みそ足らんだの槍も持ち上げれないだのとしょーもないディスり合いを繰り広げていたが、砦に入ってきた一団の足音で口論を止めた。


「参上遅くなり申し訳ない!!

 私は浦家の新たな当主、浦 島次郎と申します。貴殿の兄上で当家に婿入りしてくれた次郎殿のこと、誠に残念です」


そう言って配下20人ほど共々、頭を下げる。


 たしか浦家ってのは2番目の兄の次郎が婿に入った家だったはずだ。なのに目の前にいる男も、次郎。苗字が浦ときて島が頭に付くのに太郎じゃなく次郎、どういうことだ?


「次郎殿が次期当主として当家に入ってくれた為、

 私は島太郎から島次郎へ

 次郎殿は代わりに浜太郎と改名していたのです。

 ですがこんな事になるとは」


 でも別にだからって太郎にまた改名はしないのね。

シマジロー……複雑だわ。


「浦家の勢力が合流したことで当家の勢力は50。

 将は若に多羅尾殿に島次郎どのに左馬之助。

 さて、どうするか……」


 軍艦が唸り声をあげる。とりあえず勢力が加わったところで少しはマシになったが50対100と不利な状況に変わりはない。


「何か弱みを付ければ良いのだが……」

「じゃあさ、磯野家にそそっかしくて色々失敗しまくる嫁とか、いない?」


 ここまで名前が一致してるんだからきっとアイツが、と聞いてみるが


「磯野家の奥方様は大層しっかり者で家内を支えておると聞いております」


 そうか、あのトリッキーヘッドはいないのか。


「んーじゃあ磯野の大将が牡丹餅が大好きで30個も食うとか」

「猛将なら食えるモンは沢山食って蓄えるのは誰でもじゃねえか?」


 脳筋代表が自分でもそうすると言いたそうなドヤ顔で応える。


「んーーじゃあじゃあ、波野家の頼助が酒に目が無いとか?」

「お、それは聞いたことがありますが、策に使えますかな?」


 そこは当たってんのかい、いや世の中大体のおっさんはそうか。


「若!!……いや殿!!! お見事です。

 一連のやり取りで策を閃きましたぞ!! 」


 その時、しばらく思案していた軍艦が急に大声を上げた。

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ご覧いただきありがとうございます。

是非とも面白い作品に仕上げていきたいと

思っておりますので応援戴けると嬉しいです♪

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