第二十話 父娘の再会
小一時間で
海賊の飛空艇が領主の城前の広場に着陸したため、一時的に騒ぎになったものの、ツバキとホドラムがその場を上手く取り繕った。
ジカイラ達を始め、関係者は領主の城の謁見の間に集まり、善後策を協議することとなった。
ダグワと二人の戦士は、謁見の間に案内され、中に入る。
「お父さん!!」
その声の主は、
「クラン!! 無事だったか!!」
ダグワは、駆け寄って来るクランを抱き締める。
父娘の再会の場面に、その場に居る一同が感じ入る。
ティナが二人に歩み寄り、話し掛ける。
「良かったね。クラン。お父さんに会えて」
クランはダグワの胸から離れ、ティナの両手を握る。
「ありがとう。ティナ。お父さん、この人達が私を助けてくれたんです」
ダグワはジカイラの前に歩み出ると、片膝を着いてジカイラに頭を下げる。
二人の
「娘を助けてくれて感謝する。この御礼は、どうすれば良いだろうか。我々にできることがあれば、何でも言ってくれ」
ジカイラは少し照れながら答える。
「まぁ、『御礼』は、ひとまず置いといてだ。こいつらがクランを誘拐した犯人だ!」
そう言うとジカイラは麻袋を取り出し、逆さまにして、その中身を謁見の間の床の上に放り出した。
麻袋から出てきたのは、秘密警察戦闘員の首と鉤爪のある右手。
それは、首だけ、右手だけになっていても、床の上で動いていた。
それを見た領主アイゼンブルクやホドラム、
アイゼンブルクが尋ねる。
「何なんだ!? そ、そいつらは?? 首だけ、右手だけになっていても、まだ生きているのか?」
ジカイラが答える。
「此奴等は、革命党秘密警察の戦闘員。
「
ジカイラは、
天井の照明が戦闘員の素顔を照らしだす。
死体のような『人ならざる者』の醜悪な顔であった。
周囲に居る者達の顔が強ばる。
ジカイラが続ける。
「此奴等は素早いうえに怪力だから、組み合ったりするな。潰されるぞ。無力化するには、首を切り落とすしか無い」
ホドラムが口を開く。
「
ジカイラが答える。
「そうだ。
ツバキが口を開く。
「これから、どうすれば良いのでしょう?」
ジカイラが答える。
「クランの誘拐や、帝国政府から『テロ組織』に指定されている革命党秘密警察との関係が露呈した皇帝や帝国政府に知られないように、デン・ヘルダーの領主カッパは、全力でオレ達の口を塞ごうとするはずだ。秘密警察と関係した『国家反逆罪』は、死刑だからな」
ホドラムが尋ねる。
「具体的には?」
ジカイラが答える。
「今日、明日にも傭兵を集めて、此処に攻め込んで来るだろう」
アイゼンブルクが驚く。
「デン・ヘルダーの軍勢が、此処に攻めて来るというのか!?」
ホドラムも口を開く。
「こちらは警備兵に自警団を合わせても二百人くらいだ。中核都市であるデン・ヘルダーの軍勢は、三千人以上だぞ?」
「私も加勢するわ」
ジカイラが礼を言う。
「それは助かる。飛空艇は大きな戦力だ」
ダグワも名乗り出る。
「我々も加勢させて貰うぞ! 娘を救ってくれた礼だ! 誘拐犯共に鉄槌を下してくれようぞ!!」
ツバキが答える。
「皆さん、ありがとうございます。力を合わせて乗り切りましょう!」
伝令の警備兵が謁見の間に駆け込んでくる。
「デン・ヘルダーから軍勢がこちらに向かってきます。その数、およそ三千! 半日程で、この街に来ます!!」
ジカイラが呟く。
「早速、おいでなさったか!」
ホドラムが尋ねる。
「さて、どうする?」
ジカイラが答える。
「この速さなら、敵は重砲や攻城兵器の無い、剣や弓といった軽装備の連中だ。戦いようはある」
ジカイラが続ける。
「まず、ヒナの魔法と
「了解したわ」
ドルジも答える。
「心得た! 近隣の集落から戦士達を集めてくる!」
ツバキも口を開く。
「私にも手伝わせて下さい!」
ジカイラが答える。
「姫様は、ホドラムを手伝ってやってくれ!」
ツバキは、覚悟を決めたように答える。
「判りました!」
アイゼンブルクが皆に尋ねる。
「私はどうしたら良いんだ?」
ジカイラが笑顔で答える。
「デン・ホールンの領主なんだから、そこに座って、デンと構えていてくれ!」
ジカイラ達は、街の防衛準備に取り掛かった。
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