第十三話 絞首台
ケニーとルナは部屋に戻ると、枕元のランタンを付け、それぞれのベッドに入る。
ケニーは、女の子と相部屋になったことなどなく、緊張して眠れずにいた。
床に入ってから十分もしないうちに、ルナがケニーのベッドに入って来る。
「・・・ルナちゃん」
ルナは、ケニーの背中に自分の胸を押し付ける。
ルナは裸になっているようで、柔らかい女の感触がケニーの背中に伝わる。
ルナは、ケニーの背中越しに話し掛ける。
「ケニーたん。一緒に寝ていい?」
「良いよ」
「ありがとう」
緊張してケニーはしどろもどろに話す。
「僕は、女の子と一緒に寝た事なんて無いから、その・・・どうしていいのか・・・」
ルナは優しく微笑む。
「いいよ。無理しないで」
ルナは、覆い被さるようにケニーの上に乗ると、ケニーにキスする。
「んん・・・」
ルナの柔らかい舌が、ケニーの口の中でチロチロと舌に絡められる。
「・・・ルナちゃん」
キスの後、ルナの潤んだ瞳がケニーを見詰める。
「ケニーたん。ケニーたんの傍らには、ルナが居るからね。忘れないで」
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--翌日。
ジカイラ達は、デン・ホールンの宿屋を後にし、港湾自治都市群の中核都市デン・ヘルダーを目指して出発した。
一行の馬車は、途中、食事と休憩を取りながら、湿地と低地からなる湖沼地帯の北西街道を進んだ。
道中、木立の中で一泊し、翌日の昼に、ジカイラ達は中核都市デン・ヘルダーを遠くから視認することができた。
デン・ヘルダーに向けて幌馬車を進めるジカイラ達は、異様な光景を目にする。
街へ向かう北西街道に周辺には、無数の杭のような物が立ち並び、沢山の
ヒナが御者のジカイラに尋ねる。
「ねぇ・・・。何? あれは??」
ジカイラが答える。
「判らない。
ジカイラ達は、幌馬車を進める。
ジカイラ達が、街に近づくにつれて、その正体が判明する。
杭のように見えた物は、『絞首台』であり、絞首刑にされた者の死体が吊るされていた。
ジカイラが傍らのヒナに呟く。
「『
絞首台は、絞首刑を行うため人間を吊るす様に作られた、木材を組み合わせた逆L字型のものであった。
ジカイラが続ける。
「吊るされているのは・・・革命軍の兵士だ」
革命政府が倒れ、革命政府によって徴兵された殆どの革命軍農兵は帝国政府から赦免され帰郷したが、暴力革命に心酔して戦争犯罪を犯した者達は、帝国政府から訴追されていた。
戦争犯罪人は、帝国政府に逮捕されれば軍法会議に掛けられ極刑に処される場合もあるため、数多くの訴追されている革命軍兵士達は、港湾自治都市群へ逃げ込んでいた。
しかし、中核都市デン・ヘルダーの領主は、逃げ込んできた革命軍の兵士達を捕らえ、北西街道の周辺に絞首台を作って絞首刑にし、その骸を『皇帝陛下への忠誠の証』として晒したのだった。
沢山の
騒音のように無数の
ジカイラ以外の者は、その異様な光景に絶句する。
絶句するヒナにジカイラが歪んだ笑みを浮かべて呟く。
「役に立つ秘密警察は匿うが、役に立たない革命軍兵士は吊るして『皇帝陛下への忠誠の証』に役立てるってか・・・。なかなかイイ趣味してるじゃねぇか。此処の領主は・・・。」
兵士の骸を食べる
幌馬車からティナが顔を出してジカイラに尋ねる。
「・・・ジカさん。どうして、此処の領主は、こんなに酷い事をするの・・・?」
ジカイラが答える。
「此処の領主は、ラインハルトが怖いのさ・・・」
ティナが聞き返す。
「『怖い』って・・・?」
ジカイラが答える。
「此処の領主なんて、自治を許されているだけの辺境都市の領主で、皇宮に参内する事も、皇帝のラインハルトに謁見する事さえ許されていない。ラインハルトの一声で、たちまち失脚してしまう」
「うん」
「しかし、港湾自治都市群は、革命政府との関係が疑われている。麻薬取引、奴隷貿易、人身売買といった悪事への関与もだな」
「うん」
「だから、此処の領主は必死なのさ。『私は、皇帝陛下に忠誠を誓っています。私は、こんなに沢山の反逆者を捕らえて絞首刑にしました。皇帝陛下、御覧下さい』って、捕らえた沢山の革命軍兵士を絞首刑にして、その骸を吊るしたまま晒しているのさ」
「・・・そうなんだ」
ジカイラとティナが話しているうちにジカイラ達一行は、デン・ヘルダーの街の城門に到着する。
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