Persimmon

結城 優希@毎日投稿

Persimmon

 それは当たり前のことだと思っていた。でも、違った……

 

 その一瞬一瞬がとても特別で……かけがえのないもの……


 ボクは気付けなかった……いや、気付こうとしなかったんだ……


 予兆はあったはずだ……


 なのになんで……


 ボクはただ信じたかったんだ……


 この日々がこの先も続くと……

 

 ボクは知りたくなかったんだ……


 別れの時が来ることを……


 ボクは信じたくなかったんだ……


 残酷すぎるソレが真実であることを……



 その子は突然現れた……

 

 少し赤みを帯びた頬、張りのある美しい肌……


 ボクの貧弱な語彙力では言い表すことの出来ないほど君は美しくて……


 その子に初めて会った日ボクは、彼女に……木実に恋をしたんだ……


 その場で誰よりも存在感を放つ木実はとても美しくて……


 そして、「木実を誰にも渡したくない!」という独占欲がボクの心の奥からわき出てきた……


 それからの木実のいる日常はいつもより華やかでとても甘美なものだった……


 そんな日々は唐突に終わりを迎える。


「え?こ、木実が……失踪?」


 そう、木実が突如姿を消したのだ……


「木実がいない……だと!?なんでなんでなんでなんで!!」


「誰だよ!ボクの木実を奪ったのは!」


「ボクはただいつも通りスマホをいじりながら柿を食べてただけなのに……なんで……」


 その後木実はとある水辺で皮とヘタだけの無残な姿となって発見された……


 木実がいなくなってからかなりの年月が経過した今でもふとした瞬間、皿をつついてしまうことがある。


 そこにはもちろん柿はなくて……


 空の皿に箸が当たり、"カツンッ"と寂しげに音を鳴らすだけだった……

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