第5話 『黒き王子は謳う』~A・ベイン「オルノーコ」のアリア

我がきさき、我が妃よ!

王家のヴェールを纏った処女おとめよ!


黒い肌の美しき娘にして、

夏の草原の穢れなき秘宝よ!


この灼熱の大地の果てに広がる

海の波の様に波打つ豊かな髪には

小さく鮮やかな宝石、輝ける黄金の装飾が

綺羅星きらぼしのように散りばめられ

その黒く艶やかな肌には

花々の文様の白き入墨が

匂い立つように咲き乱れる


厚みのあるふくよかな唇は

我らが崇める赫々とした太陽の様に熱く

優しく口にふくめば果実の様に甘く滴る


嗚呼、美しき祖国コラマンティエン王国の黒き娘よ

人は我らを蛮族と嘲り

罵り、そして嘲笑うだろう


だが私はこうして歌う、野蛮な剣を打ち捨てて

この誇り高き喉を震わせ

この燃える舌の上に迸る情熱を乗せて

高らかに


夜の闇、静けさ、若さ、欲望、愛という

人々の生と喜び、営みの全ては

ことごとく『黒』の中から生まれるものだと!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る