第4話 夏の旅、夜の草原
長い長い 夏の日を
さあ走れ 我が愛しき駿馬
悠久の大地に
その美しいたてがみをなびかせて
古の偉大な王が征した草原を駆け抜けて
西へ西へ まだ見ぬ国を目指し
そして夜は ひとり火をおこして
数少ない木陰で休む
夏の草原の夜は寒く
私は父母からおし頂いた
美しい刺繍で彩られた丈夫な布を
ゆっくり身にまといなおす
草原の静かな 厳粛かつ静謐な夜に
狼達の遠吠えが響く
そして夜になるとさえずる
名も知れぬ鳥達の声の美しさもまた
私を西へ西へと誘うのだ
そこには、金の髪の美しい女がいるという
葡萄で出来た旨い美酒があるという
真っ白な石で作られた壮麗な宮殿や
聞いたこともない節回しの旋律を奏でる
吟遊詩人達
そして どこまでも続く青々と輝く海
白い帆を張り、どこまでも行くという
ああ 夏の夜とは不思議なものだ
未知なるものに 思いを馳せ続け
まだ眠ってもいないのに
夢ばかり みてしまうのだ
それが何故に こうも愉しいのだろう
夏の夜の平原の片隅で
私は目を閉じる
そして 我が想像力だけが
そらかける鷲の姿になって
夏の夜の月に
ぴんと弦を張ったような冷たい空を
布を裂くように飛んでいく
西へ西へ まだ見ぬ国を目指し
そんな草原に 薄蒼い太陽が昇りはじめる
夢見る夜は去りゆき
長い長い夏の日が幕をあける
さあ走れ 我が愛しき駿馬
悠久の大地を
その美しい脚で軽やかに
古より洋々と流れる大河を渡り行き
西へ西へ まだ見ぬ国を目指し
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