◆第三幕までのあらすじ◆

本日より第四幕連載開始予定でしたが、第三幕までのストーリーに関する記憶がちょっと遠いというご意見をいただきましたので、あらすじを作成しました!


本編開始は明日からとなります。


─ * ─


1738年、ヴェネツィアのサン・カッシアーノ劇場では華やかなバロックオペラが演じられていた。主役を演じるのは人気絶頂の歌手、リオネッロとオリヴィエーロだ。


だが二人には秘密があった。

ひとつは二人が声を合わせてデュエットを歌うと、人の心に巣食う悪魔を祓えること。

もう一つは オリヴィエーロの本名がオリヴィアで、男装した女性であること。


なぜオリヴィアは男性歌手のふりをしているのか?

そしてなぜこの世界に悪魔がいるのか?


物語は十五年前にさかのぼる。


しがない楽器職人の父と元酒場の歌手だった母に愛され、小さな村で幸せに暮らしていたオリヴィアは、流行り病によって十歳のとき、天涯孤独の身となった。


遠縁の女性アンナに引き取られたオリヴィアは、そこで美声を持つ少年リオネッロと出会う。

歌が大好きなリオと過ごすうち、オリヴィアもまた亡き母と歌った記憶を思い出し、音楽への情熱に目覚めてゆく。


だが教会の聖歌隊で歌えるのは男子のみ。充実した音楽教育をほどこしてくれるナポリの音楽院も、一般的には男子の入学のみ許可されていた。


オリヴィアはリオをうらやましく思うが、声に恵まれたせいでリオには危険が迫っていた。

この時代――18世紀のイタリアでは、ボーイソプラノの高い声を保つため少年に去勢手術をほどこすという恐ろしい習慣が存在したのだ。

大人たちの計画に気付いたオリヴィアはリオを守ろうと誓う。


しかし守られているのはオリヴィアの方だった。

リオネッロの深い愛に気付いたオリヴィアは彼と共に歩むため、またナポリの音楽院で高度な音楽教育を受けるため、男装して歌手を目指そうと決意する。


リオネッロからラテン語の聖歌を教わったオリヴィアは、両親から受けていた教育と恵まれた血筋もあり、メキメキと頭角を現して無事、音楽院へ入学が決まる。


リオネッロとオリヴィアがデュエットする歌声を聞いたアンナから悪魔が去るが、幼い二人は自分たちの歌声に力が宿っているとは気づかない。


11歳のオリヴィアと10歳のリオネッロは念願の音楽院に入ったものの、ただ歌っていればよいわけではなく、文字や楽譜の読み書きから音楽理論、作曲技法にチェンバロまで、学ばなければいけないことは多岐に渡った。


しかも指導を受けられると期待していた高名な作曲家にして声楽教師のポルポラ氏は、ちょうど引退した年という不運が重なる。


音楽院の財政は、貴族や裕福な音楽愛好家の寄付と、生徒たちの音楽活動によって支えられていた。

そのため教師の数には限りがあり、先輩が後輩を教えるシステムが確立されていた。


オリヴィアとリオネッロはカッファレッリと名乗る先輩歌手に指導を受けることとなったが、彼は才能豊かな暴君だった。

最初は反発した二人だったが、カッファレッリの歌手としての気概に触れ、演奏面も精神面も磨かれてゆく。


教会の聖歌隊に加わったり、音楽院内ホールでの演奏会に参加するなど、オリヴィアとリオネッロは少しずつ活動の場を広げていった。


だが栄光への道を歩む若者がいる一方で、夢破れて挫折を味わう者もいるのが音楽の世界。

挫折した青年歌手エンツォは世界を憎み、悪魔召喚の写本を手にした。彼は悪魔を呼び出し、ヴェスヴィオ山を噴火させることで、ナポリの町と無理心中しようとしていた。


エンツォは幼いリオネッロを仲間に引き込もうとしたが、オリヴィアがエンツォを嫌ったためうまくいかなかった。

オリヴィアを溺愛するリオは、オリヴィアが嫌う人間に近づかないのだ。


リオはエンツォと離れてから友人も増え、充実した音楽院生活を送っていた。そんなリオを、エンツォは嫉妬のまなざしで眺めていた。


エンツォはリオの本番中に火山を爆発させようとしたが、それゆえにリオとオリヴィアのデュエットを聴くこととなった。

二人の歌声によってエンツォに近づいていた悪魔の影は消滅し、エンツォは功名心にまみれる前の、純粋に音楽を楽しんで夢中になっていた子供時代の気持ちを取り戻す。


ラテン語や音楽理論にも通じていたエンツォは心機一転、作曲家を目指す決意を固め、一件落着となった。


だがなぜ中世の錬金術師が残した悪魔召喚術の写本がナポリ市中に出回っていたのか?

音楽院の生徒たちが知る由もないところで、陰謀がうごめいていたのだった。


18世紀のヨーロッパに蠢く勢力とは?

オリヴィアとリオネッロは才能を開花させ、ヨーロッパ中の劇場で名声を得ることとなるのか?

二人の恋は進展するのか?


第四幕に続く!

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