理想死追求者 第6話 ~町の探索~
この世界にも、保存食の概念はある。
が、発展しているわけではない。
何が言いたいかと言うと、この町にはまともな物資が殆どないということだ!
まあ、食糧以外の物資はそれなりにある。
だが、これはいいこととは言い切れない。
このモント区は・・・そう言えば、この世界の詳しい情報について未だに説明していなかったな。
では、少々長くなってはしまうが、この世界が何故滅びかけているのかを
説明しよう!
前提として、俺達がいるのは『中央大陸ベルシールの統一国家エルラント』だ。
エルラントは11の区に分けられ、10人の公爵と王族がそれぞれ統治している。
今回は、説明を長くしないためにも、区の名前だけ上げさせてもらうとしよう。
ガエル区、モント区、アアル区、ザザール区、エルカ区、ベルラント区、
サンタ区、ウタ区、ザンジエル区、フーナ区、だ。
この内、大陸の最北西に位置するザンジエル区に、1年ほど前、隕石が落下した。
当初は、それだけだったのが・・・大きな問題が後ほど発覚した。
隕石の落ちた地は 『古代都市ガイエス:魔を封印する地』 だったのだ。
詳しい話はまた今度の機会にしたいから、単刀直入に言うと
「魔ノ者や魔獣が封印されていた土地に隕石が落下して、封印が解けちゃったゼ!」
と言うことだ。
この世界は魔法がまったく発展していないわけではない。
それどころか、それなりに発展している部類である。
が、そんなこの世界でも・・・いや、そんな魔法が発展した世界だからこそ、
魔ノ者や魔獣の力が強大だった。
ザンジエル区は言うまでもなく、他の周辺区画までたった数ヵ月で甚大な被害を
出す結果となってしまった。
まあ、数ヵ月もあればある程度の対策ができるわけで、王は貴族軍を招集して
『魔軍討伐令を発せられた』が、貴族連合軍は大敗し・・・それに比例する
かの様に、魔軍は強くなっていった。
防衛のための兵力を損なった他の区画は順次滅ぼされていったが、自らの領土防衛のために王の招集令を無視したガエル区のみが、殆ど無傷のまま生き残ったと
言うわけさ。
まあ、ガエル公爵は完全に招集令を無視したわけではなく、信頼できる臣下に一部騎士を預け、貴族連合軍に参加させていたりもする。
しかし彼は、貴族連合軍の撤退の殿(しんがり)を務めて、亡くなってしまったが。
以上が、この世界が滅びかけている理由・経緯だ。
本来、隕石の落下地点から遠い地の都市や町、村の人間は避難出来たはずなのだが・・・。
例外は幾つかある。
例えば、腐っているとは言え食料が残っていたり、魔獣に襲われるちょっと前まで、普通に生活していた町の様子から見るに、このエルデ町は民間人が逃げ遅れた、数少ない町の一つなのだろう。
あまり、気分のいいものではないな・・・この町の物資を漁るのは。
だがまあ、死者に遠慮して生者を死なせてしまっては意味がない。
この町に残っている物資は、ありがたく、生者のために使わせてもらおう。
「大輝、これ仕舞っておいて!」
小難しいことを考えていた俺を、現実に引き戻したのは、トモエのその一言だった。
トモエがそう言いながら指をさしている方向を見ると、幾つかの樽が置いてあった。
魔法で蓋を開けてみると、中は塩漬けにされた干し肉が入っている。
こういった類の保存食は、今でも食えるのだが・・・野菜や生肉と言った類の
食べ物は、全て腐ってしまっている。
幸い、モント区は海に面しているためか、保存方法がそれなりに発展している。
魚などの海の幸を内陸に運び入れる方法が発展していったのだろう。
まあ、今はそんなことは関係ない。
俺はトモエに言われた通り、この樽達を仕舞うことにした。
え?どこに仕舞うのかって?はっはっは、愚問だな!異世界で、大量のアイテムを
持ち運ぶ時に使うものと言ったら一つだろう!
『アイテムボックス』だよ!
幸い、この世界のアイテムボックスは魔力総量によって収容量が決定する。
250万もあれば、大型の輸送船10隻分は余裕で仕舞えるね!
樽を仕舞った俺達は、探索を続けたが・・・結局、生活必需品を大量に手に入れる
だけの結果となってしまった。
いやまじで、食糧がぜんぜんないんだって!
まあ、物資全体が不足しているわけだし、まったく収穫なし、と言うわけでもない。
そもそも、初探索でこれだけ集められたのなら、上々と言うべきだ!(反論は
許さん!)
「大輝、そろそろ帰りましょうか」
目ぼしい家屋を探索し終わったトモエは、俺の望んでいた提案をしてくれた。
無論、俺は彼女の提案を受けいれて、早速ガエル区に戻ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます