理想死追求者 第5話 ~外出~
俺達は、早速 特別外出券 を発行してもらい、他の地区への探索を行うことになった。
今朝、俺が彼女に
「何故トモエも組合員登録をしたんだ?」
と聞く前に、外出許可券の発行・受け渡しのカウンターに一直線に
向かってしまったし。
なんか俺、避けられてる?
かと思ったが、どうやら違うようだ。
「大輝・・・とても警戒されてたわよ」
真剣な口調でそう言われた。
最初は何のことだか、と言う感じだったが、彼女の説明によると
『大輝、魔闘の奥義を習得したでしょう?つまり大輝は今 世界最強の武人 になるのかな?戦い慣れた人からしたら、身長が170しかないのに、全く隙の無い人がやって来たことになる。だから、ジョイ=サンの私兵達は皆、大輝の異様さに気が付いて警戒してたの。』
だとさ。
それと、身長が170ギリギリなのはこの世界では結構コンプレックスだから言わないで・・・。
(※この世界の男性の平均身長180、女性170。ついでにトモエは165だゾ!)
それはさて措き、なるほど問題は沢山あるわけだ。
だが、一番最初に解決すべき問題は
「トモエ、警戒されていることを教えてくれてありがとう。でも、何でトモエも組合員として登録したの?」
そう、やっとこの問題を解決する時が来たのだ!
彼女の話を簡単にまとめると、
『神の権能とは世界に干渉する力、つまり空間軸とか時間軸とかに干渉する力のことよ。
要は、剣神が人間に堕落したとしても、その美しい剣筋は失わない。
私は、ある程度の魔法を扱うことが出来たから、今でも魔法が
使えるってわけ!
まあ、私自身の魔力はかなり少ないから、神界と違って、護身程度の魔法しか使えないけど』
と言うことだそうだ。
組合員になった理由にはなってないけど・・・まあいっか!難しいことは考えないでおこう。
ああ、話は大きく変わるが、俺は拠点とする都市を決めた!
と言っても、さっきまで俺達がいた都市だがな。
ガエル区にある10の主要都市の1つ、第3区画境都市ザウェルだ!
ついでに、区画境部の主要都市は4つあって、西から
第1区画境都市グウェル 領主:ドウォル・伯・フォン・グウェル
第2区画境都市アウェル 領主:アル・伯・フォン・アウェル
第3区画境都市ザウェル 領主:エルザ・伯・フォン・ザウェル
第4区画境都市ルウェル 領主:ジーク・伯・フォン・ルウェル
って感じ!(※ガエル区は、中央大陸の最南東に位置する。)
さて、そろそろ調達の仕事に集中するとしましょうか。
ああ、そうそう、話が長くなって申し訳ないんだけど最後にもう一つだけ、ね!
独民には、自警団、支援会、調達員、調達員の護衛、などの役職があり、登録する時にどれか一つを選択する。
俺は昨日、トモエに勝手に登録されてしまったのだが・・・調達員、つまり
トモエの護衛役になることになってしまった。
パーティーの登録まで勝手にされてしまうし。
まあ、都合よく動けそうだし、問題ないよな?
まあいい、今回は本当にここらで話を切り上げて、外の探索に集中しよう。
「さあトモエさん、どこに行くのが良いと思いますかね?」
俺はトモエに良さそうな場所を聞いてみることにした。
一応、この国の精密な地図を頭の中に入れてはいるが、地図は所詮地図にすぎない。
その都市に、町に、村に何があるかまで覚えているわけではない。
遺跡とか、歴史的なモノがある場所とか、国の重要機能がある場所は詳しく覚えてるんだけどね。
そんな俺に対して、元々神だった彼女はより多くの知識を有している。
適材適所ってことだな!
ん~、と唸りながら、人差し指で顎をツンツンしながら考え込んだトモエは、暫くして考えが纏まったのか
「うん、場所は決まったから、お姫様抱っこ」
と訳の分からない要求をしてきた。
俺が眉をひそめながら戸惑っていると、元女神様の懇切丁寧な説明が入る。
「はぁ、勘違いしないで。大輝は 魔闘の『瞬歩』 で素早く動けるでしょ?私達の目的地はここからちょっと距離があるから、早く移動しないと日帰りなんて
無理なのよ」
頬を赤らめながら、ツンデレの様に・・・と言うわけもなく、真顔で
そう言われた。
俺は溜息をつきながら、彼女を抱きかかえて走り出した。
「私達は今、ガエル区に隣接している区画の中で、最も東にあるモント区にいるのは
分かってるわね?」
俺は彼女の問いかけに頷く。
今は『瞬歩』に集中したいのだが、無視するわけにもいかない。
だから、簡単な返答しか出来ないことを許してほしい・・・のだが、「はい」と返事を返すまで何度もしつこく
「分かった?」とか「聞いてるの?」などと聞いて来るのが、このトモエと言う元女神だ!はぁ、何度もしつこく聞いて来る元女神の話は措いといて、俺達が今向かっている目的地について話そうと思う。
モント地区のちょっと奥にある、エルデと言う町だ!都市ではないゾ!
え?何故都市に行かないのかって?それは簡単さ!日帰りで行ける場所に探索されていない都市がないからさ!
だから、探索されていない都市じゃなくて、探索されていない町に行くことになったんだ!簡単な話だろう?
「大輝、あれじゃない」
どうやら、俺が目的地について考えている間に、到着してしまったようだな。
・・・外壁の上から見た町の様子はかなり酷い。
倒壊した家、多数の血痕、血の付いた小さな人形など、見るに堪えないものばかり。
だが、人間の死体だけは一つとして見当たらなかった。
魔獣共は殺した人間を骨になるまでしゃぶり尽くすようだ。
結構生々しくて怖いな。
まあ、異世界と言っても、ゲームや漫画の中じゃなくて現実だからな。
が、この町を壊滅させたであろう魔獣の姿はあまり多くない。
これだけの数で町を滅ぼした恐ろしい生物なのか、それとも蝗害の様に食事をし終わったらすぐに新たな食糧を求めて移動するのか・・・現段階では分からない。
まあ、今はそんなことを考えても仕方がない。
探索を素早く終わらせて、とっとと帰ることにしよう!
トモエも、気分が悪そうな顔をしているしな。
え?魔獣を殺さないのかって?
んん、今殺したところで、全体的な数に影響はないし、外出券はルールは守らなければ1ヵ月も発行を停止されてしまうから、時間をかけることも出来ない。
今回は、魔獣との戦闘は出来る限り回避していく!ことになるだろう。
まあ、しかたないね。
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