第6話再会

「謎クラブ」の友人たちと公園でペットの見せっこをすることになった。

いつも、自分のペットが最高だと言い合って、話が先に進まないからだった。

「研磨、それが君の犬?。かっこいいな。」

「強そうだよね。」

「北斗の鳥はハルっていったっけ?。綺麗な鳥だね。」

「トゥルルル」

「わー、なんて素敵な声なんだ。」

「学のペットは亀なんだ。」

「そうだよ、玄武は健康の守り神なんだ。僕、玄武が来てから健康になれたんだ。」

「本当に、いつも学校を休んでた学とは思えないくらい、健康そうになったよな。」

「聡のペットは猿なんだ。覚って言うのか。よろしく覚。」

「僕、覚とおんなじ顔してるおじいさんを知ってるよ。」

「僕も知ってる。」

皆んなは大喜びで、友達のペットを撫でてみる。

そこにちょうど小さな狐を連れた少女が通りかかった。

「あれ、クリスじゃないか。君もペットを飼ってるの?。」

「研磨、君の知り合い?。」

「うん、母さんの友達の子なんだ、家にも何回も来たことがあるよ。ねえ、良かったら、こっちに来て一緒に遊ばないか?。クリスのペットは小さな狐なんだ。かわいいな。」

「クーっていうの。」

「よろしくクー。」

研磨とクリスの様子をみて、皆は研磨がクリスの事を好きなのにピンときた。

「クリスはどこの学校?。」

「隣町の学校に通ってるの。」

「僕らは『謎クラブ』のメンバーなんだ。よろしくね。」

「そうだ、ケルはフリスビーが上手なんだ。見てて。」

研磨がフリスビーを投げるとケルはジャンプしながら上手にパクっと咥えて研磨に渡した。

研磨はスピードをつけてどんどん投げたが、ケルはどんな時でも上手に咥えた。

皆んな大喜びでケルに拍手をおくった。

「覚はあっちむいてホイが上手なんだ。誰かやってみる?。」

「本当にあっち向いてホイができるの?。いくよ。あっち向いて。ホイ。」

「ホイ。」

「ホイ。」

「ホイ。」

覚の全勝だった。

「ビックリした。凄い、頭がいいんだ。」

学はペンとノートとトランプを取り足した。

「玄武は数学が出来るんだ。ここに問題を書くと、それを見てトランプで答えるんだ。」

学は計算式を書き、みんなと玄武に見せた。

玄武はトランプを選んで咥えてきて、皆に見せた。

学は計算式を解いてみせ、玄武が持ってきたトランプと比べた。

「すごい。正解だ。もう一問やって見せて。因数分解とかできる?。」

「なんでもできるよ。マイナスの時にはトランプを逆さにするし、分数はトランプを上下に置くんだ。小数点は間にジョーカーを点の代わりに置くんだ。」

「すごい。期末テストの時に、玄武を貸してほしい。」

ハルは高速で上空に舞い上がり急降下してみせたし、クーは公園の木にすばやく登ってみせた。

「クーは探し物も得意なんだ。」

「すごいや、皆んな最高。一番は決められないね。」

5時のチャイムが聴こえてきたので皆で、公園の外に出た。

「また今度、この公園で集まろうよ。クリスも来てね。待ってるから。」

その時、公園の横の古びた木造の小さな店が目にはいってきた。

「あれ?、こんな所に、あのペット屋がある。おかしいな、この前は違う場所にあったのに。」

「僕この店でペットを買ったんだよ。もちろんその時は違う場所にこの店があったんだけど。」

「僕も同じだ。」

「私も同じ。」

「皆んな知ってる?。都市伝説の一つに「困っている子どもにだけ怪獣(ペット)を売ってくれる、妖怪みたいなおじいさんの店」の話があるんだ。その店は、いつの間にか困っている子供の前に現れるそうだ。そして、子供の悩みを聞いて、それを解決するための怪獣を売ってくれるっていうんだ。その怪獣は、見た目は犬だったり、猫や、キツネ、鳥、蛇だったり普通のペットなんだけど、中身は怪物で、主人になった子供を助けてくれるらしい。実は僕のケルは本当はケルベロスなんだ。いじめっ子をやっつけてくれたし、泥棒も捕まえたんだ。」

「やっぱり。僕のハルも本当はハルピュイアで、家族の為に復讐してくれたし、僕を殴ったヤクザを空高く持ち上げて、街灯にぶる下げて警察に逮捕させたんだ。」

「家の覚は覚の妖怪で、父さんを騙して金を取ろうとした悪いやつをやっつけてくれたよ。」

「私のクーは管狐で、占いをするの。とっても良く当たるのよ。それに行方不明だった父さんを見つけてくれたの。」

「玄武は本当に、健康の守り神なんだ。僕、玄武が来てから健康になれたんだ。それに溺れて死にかけた時、助けてくれたんだ。」

「どうする?。僕はもう一度このペット屋に行ってお礼を言おうと思ってたんだ。僕らはもう困っていない。それなのに僕らの前にこのペット屋が現れたのは、何か理由があるんじゃあないかな。」

「僕も探してたのに見つからなかった。こんな所にあるなんて。前は絶対ここじゃなかった。きっとペット屋が僕らを呼んでるんだ。行ってみよう。」

結局、皆んなでペット屋に入って行った。

「ごめんください。」

「何か用かい?。」

妖怪みたいなおじいさんがいきなり現れて答えた。

しかし、肩に猿は乗っていなかった。

研磨と北斗とクリスは、あの時の猿は覚だったことに気づいて覚を振り返って頷いた。

「僕らお礼が言いたくて来ました。皆んなおじいさんがペットを売ってくれたおかげで助かりました。せーの。」

「ありがとう。」

五人は声を合わせておじいさんにお礼を言った。

「この子達を可愛がってくれて、こちらこそありがとうじゃ。ちょっと皆んな、こっちに来て座らんかい?。」

あちこちにバラバラと置いてある椅子に皆が腰掛けると、店の奥から、綺麗な女の人とがっしりした男の人が出てきて、皆にジュースとお菓子を渡してくれた。

「この二人は、おじいさんの子供なの?。」

「いいえ、違います。私はエキドナです。怪物たちの母親なんです。彼はダイダラボッチ。二人共人間の姿になって、この店で働いてるの。よろしくね。」

「そういえば、おじいさんは妖怪なの?。」

「ああ、そうじゃ。儂はの、ぬらりひょんの弟なのじゃ。」

「そうだったんだ。妖怪にも親や兄弟がいるんだね。僕たちなんにも知らなかくてごめんなさい。」

「ええんじゃよ。仲良くしてくれればそれでええんじゃないかい?。」

そう言っておじいさんは笑った。

エキドナの傍にケルとハルが寄ってきて、甘えるような仕草をして、鳴きはじめた。

「ケルとハルのお母さんなんだ。」

ダイダラボッチの傍に玄武と管狐と覚がやってきて何か話し合っているような仕草をした。

「みんな仲間なんだね。」

研磨がおじいさんに話し始めた。

「おじいさんの店の事、都市伝説になってるんだ。それだと、「おじいさんから買ったペットにちゃんと食べ物をあげて、散歩や世話をしてあげて、友達みたいに仲良くならないと、怪獣や妖怪はいつの間にか、おじいさんの店に帰っちゃうらしい。」っていうんだ。僕はケルの事が大好きで、大事にしているつもりだけど、もしおじいさんの店にケルが帰っちゃったら嫌だなって、ずっと心配だったんだ。」

「相棒だと思ってくれておるのだろう?。研磨も、ここにいるみんなも、うちの子たちを大事にしてくれとる。ずっと一緒に居てあげておくれ。」

おじいさんの言葉でみんなはほっとした。

みんなでわいわいしてると、ペット屋のおじいさんが真面目な顔で話し出した。

「わしの話を聞いてくれるかい?。現代社会では怪獣や妖怪が人間たちに忘れ去られ、わしらは人間のふりをして、能力を隠して生きておる。それはわしらにとって、窮屈で、生きづらいものなのだ。それに不満を持っている仲間が、数多くいる。酒呑童子や天邪鬼、ぬらりひょん、牛鬼、布団かぶせ、ヤマタノオロチ、玉藻の前、海坊主、オーグ、ゴブリンなどじゃ。

酒呑童子は人間たちと戦って、妖怪や怪獣が支配する世界を作ろうとしているんじゃ。明日の夜、都庁を乗っ取って、手始めに日本から妖怪が支配する計画じゃ。わしは、嫌なんじゃよ、人間と争うのが。お前さんたちを見れば解る。わしらは友人になれる。そう思わんかい?。」

「もちろん、友人になれるよ。」

「うん、そうだ。」

「そうだ、そうだ。」

「なれるよ。」

「明日、学校が終わったらまたここに集まっておくれ。わしらが力を合わせて酒呑童子どもを止めてみんかい?。」

次の日、学校が終わってすぐに家に帰って、自分たちのペットと共にペット屋に集合することになった。

「酒呑童子って凄く強いんでしょ。そんな妖怪に僕ら負けちゃうかもしれない。」

「ペット屋のおじいさんには、きっと良い考えがあるのさ。とにかく僕らの出来る事をしよう。」

「そうだよ。聡の言う通りだ。僕は人間と妖怪達が争うなんて嫌だもの。酒呑童子達も説得したいな。」

「そうだよね、人間と妖怪と怪獣、みんなが幸せになれたら良いよね。」

謎クラブのみんなに、共通の目標が出来たようだ。

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