第4話聡と覚

親友に悩みを相談したら、

「聡の悩みは、はオレ不幸詐欺だ。」

ってきめつけられた。

幸福とか不幸って、自分がどう感じてるからだろう。

他人から見て幸福そうでも、不幸な人もいるし、不幸だて見られてても本人はそんなことないって事もある。

自分の大切なものが満たされているかどうかが、幸福か不幸かの境目だと僕は思うんだ。

「自分の事を幸福だと思っている人ってどのくらいいるんだろう。僕はお腹いっぱいご飯を食べてるし、お小遣いだってたくさんもらってる。でも、幸せじゃない。不幸なんだ。」

「甘えるなよ。世の中にはお前より不幸な人がたくさんいる。それに誰が見てもお前は不幸じゃない。」

「僕は両親に愛されてないんだ。僕の事なんか両親は気にしてない。うちの父さんは県議会議員の仕事でいつも家にいない。母さんも父さんの事務所の用事で、懇親会とか、食事会とか、病院や学校の訪問とかでいつも家にいない。父さんも母さんも僕の成績のことしか興味がないんだ。」

「仕事が忙しい両親をもってるヤツなんていくらでもいる。それなのに、どうしてお前は不幸ってことになるんだ。」

「小さなころから、学校であった出来事とか、友達のこととか、一度も聞かれたことがなかった。抱きしめられた記憶も、家族で遊びに行った記憶もない。運動会も授業参観にも両親は来てくれなかった。僕が熱を出して学校を休んだって、お手伝いさんに面倒を見させるだけ。毎日、通いのお手伝いさんが用意しておいた食事を一人で食べるんだ。」

「それでも、金持ちで、成績優秀なお前が、不幸って言ったらおかしい。オレ不幸詐欺罪で逮捕されるぞ。」

「オレ不幸詐欺罪って、なんだよ。聞いたことないよ。」

残念なことに僕の気持ちは親友にも理解してもらえないらしかった。

僕の家の中はいつもガランとしていて、寒々している。

友達の家に行くと、そこは温かくて、笑いが絶えない。

お母さんの手料理を腹いっぱい食べて、家族で同じ映画を見たり、家族旅行をしたりどれも僕の家にはないものだ。

ペットでも飼えたら気がまぎれるのかもしれないのにな。


進学塾からの帰り道、古びた木造の小さな店が目にはいってきた。

看板は汚れてたけど、ペットという文字だけは読めた。

その店の入り口は、ガラスの引き戸になっていて、外からでも、犬や猫がケージにはいっているのが見える。

僕は、恐る恐る中に入った。

「ごめんください。」

と言ったら、

「なんか妖怪。」

と、耳元で、かすれた声がしたから、飛び上がって驚いた。

いつの間にか、小さな皺くちゃな顔をした妖怪みたいなおじいさんが、僕のすぐ横に立っていた。

いや、おじいさんだけじゃなかった.

おじいさんの肩にはおじいさんとそっくりのしわくちゃな顔をした小さなサルがチョコンとのっていた。

利口そうなサルだった。

「そのサル利口そうな顔をしてるね。」

「そうじゃ、このサルはとっても利口なんじゃ。このサルが欲しいかい?。」

僕は財布を覗いてみて言った。

「今、一万円しか持ってないんです。サルって三十万くらいするんでしょ?。」

「大事にするなら、一万でいいぞ。このサル飼いたいかい?。」

「本当に一万円でいいんですか?。僕、いつも一人で寂しくて。絶対大事にします。」

「そうか、このサルは覚と言うのじゃ。肩にのせていいかい?。」

おじいさんは、サルを自分の肩から僕の肩に移動させた。

僕は嬉しくなって、大急ぎで家に帰った。

サルを自分の部屋に入れて、水と果物をビニールのシートの上に用意して、大急ぎでお金を持って買い物に行った。

大きなケージと、止まり木と、モンキーフードと食器を買ってまた大急ぎで戻ってきた。

日当たりがいい窓際にケージと止まり木をセットしてサルを入れてあげると、サルは嬉しそうに見えた。

「キミ、覚って名前なの?。そういえば、妖怪に覚のお化けっていたよね。」

辞書で覚を引いてみたら、

「山中で人間の近くに現れ、相手の心を読み「お前は恐いと思ったな」などと次々に考えを言い当て、隙を見て取って食おうとするが、木片や焚き木などが偶然跳ねて覚にぶつかると、思わぬことが起きたことに驚き、逃げ去って行ったとされる。」

と、あった。

「キミが本当の覚のお化けだったらいいのに。父さんと母さんが僕の事を好きなのか嫌いなのかわかるんだけどな。」

覚は皺くちゃの顔で目を閉じた。

引っ越しで疲れていたのかもしれない。


覚が家に来てから、僕は家に帰るのが楽しくなった。

急いで家に帰って、果物や木の実をあげると、しわしわの顔で目を細めて頬一杯に頬張って食べてる。

その姿を眺めてながら、一緒に僕も食事をし、今日会ったことを覚に話した。

覚はまるで僕が話していることが解っているみたいに、頷いたり、口をあけたり、目を丸くしたりする。

覚が僕を指差し、その指を右に移動した。

「あっち向いてホイができるの?。いいよ。あっち向いて。ホイ。」

「ホイ。」

「ホイ。」

「ホイ。」

あー、また負けた。

覚の全勝、僕の完敗だ。

「覚、僕の心を読んでるのかい?。」

覚は皺くちゃの顔で目を閉じた。

「すぐに、そうやってしらばっくれるんだから。」

そして、学校では「謎クラブ」の友達とペットの話題で盛り上がる。

「うちの犬、フリスビーが凄く上手なんだ。待てもお手も覚えたぜ。」

「うちの鳥はすごくきれいな声で鳴く。それに、僕の肩に止まって散歩しても逃げたりしないんだ。」

「うちのサルはミカンを綺麗にむいて食べるし、お風呂にはいるのが好きなんだ。あと、あっち向いてホイが強いんだ。」


覚が家に来て三週間たったある日、母さんが夕方に帰ってきて、

「聡、あなた自分のお部屋でサルを飼っているんですって?。佳代さん(お手伝いさん)が言ってたわよ。」

と、言った。

今まで気がつかなかったのか?、三週間もたってるのに。

「自分で掃除もしてるし、ご飯もあげてるし、お風呂にも入れてるんだ。すごく利口なサルなんだ。飼っていてもいいでしょ?。」

「そうね、勉強の邪魔にならないのなら、いいけど。」

「大丈夫。勉強はちゃんとしてるから。」

「じゅあ、今夜はパーティーで父さんも母さんも遅くなるから、いつものように戸締りには気を付けてね。」

そう言って、母さんは急いでまた出かけて行った。

本当に僕には興味がないんだな。

そういえば、覚がきてからは、自分の事を不幸だと考えないようになった。

覚がいつでも一緒にいてくれるから、一人ぼっちで変なことを考えることもなくなったし、僕はただ寂しかっただけなのかもしれない。

父さんや母さんの愛情がないせいで不幸だと思ってたけど、そうじゃなかったのかな?。

親友の言う通り、僕はオレ不幸詐欺で自分で自分を哀れんでただけだったのかな?。


「日曜日の昼2時に広報のカメラマンが来て家族の写真を撮るから家にいなさい。」

「でも父さん、日曜日の5時から家庭教師の先生がくるけど?」

「それまでには、終わるはずだ。」

眼鏡をかけたカメラマンがきて、

「では家族の日常を撮りますから、いつもどおりでお願いします。」

だって。

普段、日曜日でも家族がそろうのは珍しい。

父さんは家に居ても、いつも書斎にこもって仕事をしているし、母さんが家にいる時はいつも誰かと電話してる。

いつもどおりってなんだろう?。

「みなさんソファーでくつろいで、はい、自然に笑いながら会話して下さい。」

父さんも母さんも仕事でみせるうそっぽい笑顔をカメラに向けている。

「母さん、美容室で化粧してもらったの?。別人みたいだね。」

「何言ってるの。いつもこうでしょう。まったく。」

「はい、僕、もうちょっと笑えるかな?。」

僕は無理やり笑顔をつくるのが苦手だ。

「息子は写真を取られるのが苦手なんです。緊張するみたいで。」

「そうですか。じゃあ次はテーブルでハイティーしてるところをお願いします。普段通りでけっこうです。」

一緒に「テーブルを囲む事なんかないのに。」

二時間もかけて何枚も写真を取ってカメラマンは帰って行った。

カメラマンが帰れば、父さんは書斎にこもり、母さんは居間で電話をし、僕は家庭教師と部屋に向う、いつもどおりのバラバラな家族に逆戻り。

なんか、嘘をついてるみたい。

嫌だなって感じてるの、僕だけかな?。

「今出ていった人、新聞記者なの?。」

「ううん、広報のカメラマン。」

「じゃあ聡君の写真、県の広報に乗るんだね。」

家庭教師の杉山さんは、まだ大学生でちょっとミーハーだ。

インフルエンサーの言うとおりに食べ歩きをしたり、映画を見たりしている。

なぜ食べたいものや興味があるものを、他人に教えてもらわないと決められないのか、とっても不思議だ。

「杉山さんは自分の事を不幸だって思った事ある?。」

「まさか、顔も良いって言われるし、彼女もいるし、一流大学にもはいったし。僕は皆んなに羨ましがれる存在なんだ。不幸だなんて思った事あるわけがないだろう?。」

杉山さんにとっては自分が不幸かどうかも他人が決めるらしい。

覚は杉山さんにまったく興味がないらしく、

杉山さんが来る時はいつも眠っている。

杉山さんも、

「猿なんて、今のトレンドじゃあないよ。猫とかが良かったんじゃない?。」

なんて言ってる。

僕は相棒をトレンドで決めたりしないのに。


「聡坊ちゃん、おはようございます。今日もご両親をお借りします。」

秘書の早坂さんが、久しぶりに家まで二人を迎えに来て、大急ぎで出かけて行った。

京都で泊まり込みで支持者の接待をするのだそうだ。

「ご両親は責任のある立場におられるのですから、坊ちゃんも協力してあげないと。」

と、早坂さんは僕に会うたびにそう言う。

早坂さんは県議員をしていたお爺さんの秘書もしていたらしい。

父さんも子供の頃、早坂さんに同じことを言われてたんだろうか?。

僕は早坂さんが苦手だし、覚もそうみたいだ。

さっき、早坂さんが来た時、覚と庭で遊んでいたんだけれど、早坂さんを見たら覚は急いで僕の背中に隠れてたから。

杉山さんや佳代さんが来ても、興味なさそうに眠ってるのに。


「坊ちゃん、警察の方が殺人犯が隠れてないか調べたいとおっしゃって玄関で待ってるんですけど。」

「殺人犯ってどういうこと?。」

「逃走中の殺人犯がこの近くで目撃されまして、この近辺のお宅に殺人犯が忍び込んで隠れていないかを調べております。ご協力願います。」

お巡りさんは制服を着てるけど、なんだか早坂さんみたいな目をしていて、僕は好きになれなかった。

「でも、知らない人を家に上げてはいけないと、母に言われてますから。」

「いやいや、子供と女性だけの家に殺人犯が忍び込んでいたら危険です。私が安全を確認してあげますので。では、上がらせてもらいます。」

お巡りさんは靴を脱いで、上がろうとした。

そこに黒い影が飛んできて、お巡りさんに飛びかかった。

殺人犯?、いや、覚だ。

「なんだこいつ!。何しやがる。」

お巡りさんが、覚を自分の顔から引っぺがして放り投げた。

『なんだこのサル、せっかく、警察に化けて県知事の家に侵入しようとしてるのに。』

突然、頭のなかで声がした。

「佳代さん、110番通報して、にせ警官だ。」

僕が叫ぶとそいつは大急ぎで逃げ出した。

「やっぱり。本物だったら逃げるはずがないよ。」

佳代さんの110番通報で、すぐに顔見知りの派出所のお巡りさんが駆けつけてくれた。

「大丈夫でしたか?。制服の警官が逃亡中の殺人犯の捜索と言って、家に上がり込もうとした?。このへんで殺人犯が逃亡なんかしていませんよ。でも、よくにせ警官だって解りましたね。」

その後、佳代さんと僕は警察署に行って、モンタージュをつくる手伝いをさせられた。

「覚のお陰だ。でも、あの時、にせ警官の心の中が聞こえたのは、どうしてだろう?。僕って、超能力者?。違う、きっと覚は本物の覚のお化けなんだ。」

僕は、覚に果物や木の実を沢山あげた。

「ありがとう。覚。」

僕がお礼を言ったら、果物を口いっぱいに頬張りながら、覚は照れたみたいに頭をかいた。


「にせ警官が家に入り込もうとしたんだって?。」

「怖くなかった?。よくにせ警官って解ったわね?。」

京都から帰ってきた両親が珍しく、僕に興味を示した。

「覚が悪い奴だって教えてくれたんだ。」

僕はうそはついていない。

「坊ちゃんったら、まるでどこかの名探偵みたいでした。見かけは子供、頭脳は大人、その実態はホームズ聡とワトソン覚なんて。」

佳代さんがそう言ってクスクス笑っていた。

佳代さんって、テンションが上がるとちょっと変な人になっちゃうんだ。

「そうか、サルでも番犬くらいには役に立つんだな。だが、何が狙いだったんだろう。ただの泥棒か?。それとも...。」

警察は両親にも事情聴取をした、両親の不在を知っていた人たちの名前と、ニセ警官に思い当たるふしがないかを訊いていた。

「いま、早坂の紹介で大手企業の支援が受けられそうになっているんだ。聡、SNSとかやっていないだろうな、今炎上するわけにはいかないんだ。」

「僕はSNSに興味ないけど。」

「今の家庭教師はたしかSNSをやっていたな。」

「そうだけど、今どき大学生でSNSをやっていない人いないでしょう。」

父さんは杉山さんを辞めさせ、教師を定年退職した人を代わりに雇った。

父さんは、まるでSNSが怖いみたいだ。

これって、フラグなのか?。

案の定、SNSで父さんの事務所が炎上した。

この前京都に泊まり込みで支持者の接待をしたことが、すっぱ抜かれてそれがなにか違反になってると言われてた。

新聞記者が事務所や家に押しかけてきたので、父さんと母さんはどっかに出張に行っちゃった。

事務所のSNSは次から次へと炎上していった。

妖怪の日車がゴロゴロ転がって、大火事になっていくみたいにSNSの炎上が大きくなっていく。

学校でも、

「お前んとこの父さん炎上してるらしいな。」

と、友達に言われた。

僕はSNSなんか信用してないから、

「そうらしいね。」

って、答えておいた。

覚に、

「父さん達、SNSで炎上して、何日も家に帰ってきてないけど、僕にできることあるのかな?。」

って、聞いてみた。

覚は皺くちゃの顔で目を閉じた。

また、覚はとぼけてるらしい。

三週間もたってから、父さんと母さんがこっそり家に帰ってきた。

早坂さんも一緒だ。

「こうなっては仕方がないですね、まとまったお金を用意してください。私が、ある政治家に裏金を渡します。彼が、すべてなかったことにしてくれますから。」

早坂さんの言葉をきいて、両親は迷っていた。

「しかし、裏金を政治家に渡すなんて。」

と、父さんが言った時、覚が静かに部屋に入ってきて、僕の肩にのった。

「何を言っているんです。SNS を甘く見ると、政治生命が終わってしまいますよ。」

『馬鹿な奴らだ、早く金をよこせ。それを持って、俺は海外に高飛びだ。せっかく俺がうまくSNSを炎上させたんだからな。』

覚が早坂さんに飛びかかり、背広のポケットから黒い手帳をもって、庭に逃げて行った。

「待て!。このサル!。それを返せ!。」

『あの手帳にはすべてが書いてある。早く取り戻さないと、まずい。』

「早坂さんがわざとSNSを炎上させて、父さんのお金を取って海外に逃げるつもりだったんだ。全部手帳に書いてある!。母さん警察に電話して。父さんは早坂さんを捕まえて。」

父さんは早坂さんを押し倒して、四の字固めで捕まえている。

母さんは警察に電話した。

僕は覚を呼んで、黒い手帳を母さんに見せた。

母さんは手帳を見ながら、警察に電話で説明している。

早坂さんは、四の字固めが痛くて、気を失いそうで声も出せない。

そんなことをしているうちに、あっと言う間に警察が到着して、早坂さんを連れて行った。

僕の肩で覚が「ヒヒヒ」と笑った。

よっぽど早坂さんが嫌いだったんだ。

父さんが僕のところに来て、

「ありがとう、聡。全部お前のお陰だ。」

と、いった。

『抱きしめたいが、どうすればいいのか、解らない。オレは両親に抱きしめてもらったことがないからな。』

父さんの心の声が聞こえてきた。

「そうなんだ、じゃあ、僕が教えてあげる。」

僕は父さんの体をぎゅっと抱きしめた。

そうしたら、父さんもおずおずと僕の体に腕をまわして、ぎゅっと抱きしめ返した。

『私も両親に抱きしめられた記憶がなくって、聡を抱きしめてあげられなかった。』

今度は母さんの心の声が聞こえた。

「母さんもおいで、ぎゅっとしてよ。」

僕の言葉に母さんも二人の上からぎゅっとしてくれた。

なんだ、こんなに簡単なことだったんだ。

「これからは、時々、ぎゅっとハグしようね。幸せな気持ちになれるでしょ。」

「本当だな。」

「そうね。」

僕らはしばらくハグをしていた。

結局、今回の事は全部早坂さんがお金目当てに企んだ事だったと、警察が教えてくれた。

記者会見もして、SNSの炎上騒ぎは収まった。

僕は自分を不幸だと思う事をやめた。

父さんと母さんは、自分が子供の頃、両親に厳しく育てられたせいで、僕への接し方が解らなかったと、話してくれた。

覚は僕のお願いを聞いてくれたんだ。

覚はやっぱり覚の妖怪だったけど、それでも僕の相棒だ。

そして、覚のお陰で僕ら家族は幸せになれた。


謎クラブで研磨が「困っている子どもにだけ怪獣や妖怪(ペット)を売ってくれる、妖怪みたいなおじいさんの店」の話をしてた。

そんな都市伝説があるなんて僕は知らなかった。

でも、覚を買ったあのペット屋がそうなんだって思った。

これは僕と覚の秘密だ、謎クラブのみんなにも言えないな。

だって覚が妖怪だってバレたら、どうなるの?。

解剖するからって政府に連れて行かれるかもしれない。

絶対に秘密にしよう。

だって僕は覚とずっと一緒に居たいんだ。


君、好きな娘っている?。

ぼくは、近所に住んでる影山さんのことが好きなんだ。

誰にも秘密なんだけどね。

影山さんは美人で頭もいい、でも、ちょっと口が悪いんだ。

「影山さん、買い物?。」

「ええ、聡くんはペットの散歩?。」

「そう、本当は首輪なんかつけたくないんだけど、マナーだって言われて。覚はとっても利口だから人を襲ったりしないのにな。」

「そうね、飼い主に似ず、利口そうね。でも、動物が怖い人がそばを通るかもしれないから、首輪をしてた方がいいかもね。」

「影山さん、覚を撫でてみる?。フワフワなんだよ。」

「いいの?。本当だ、覚くん、フワフワで気持ちいい。」

影山さんに撫でられて覚も気持ちよさそうに目を閉じた。

「影山さんどこまで、買い物に行くの?。途中まで一緒に行かない?。」

「聡くんと一緒に歩くのは気が進まないけど、覚くんも一緒だったらいいわよ。」

『わあ、聡くんと一緒に歩ける、嬉しい。』

影山さんの心の声が聞こえてきた。

ーえ?、これって、影山さんも僕の事好きなんじゃあないの?。ー

僕は、勇気をだして自分の気持ちを伝えることにした。

「あのね、僕、ずっと影山さんの事、好きだったんだ。もしよかったら、付き合わない?。」

ーああ、言っちゃった。ー

影山さんは真っ赤になって、もじもじしてた。

『嬉しい。でも、なんて言えばいいのかしら?。』

ーうわー、最高!。ー

「もし、付き合ってもいいって思ってるなら、頷いて。」

影山さんはゆっくり頷いた。

覚のおかげで、僕は彼女までできた。

覚は本当に最高の相棒だ。





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