第3話 迷惑で卑猥な乱入者
「メ、メメメ、メリエベーラさん!ももももも、もしかして昨晩も、こ、この部屋に居たのですか?!」
「ええ。まさか聖女様があんなに激しく腰をクイックイッと振るなんてね~~♪まるで盛の付いた犬みたい」
「ヒィエ~~~~。し、しししし、仕方がないじゃないですか……。ヴァイスさんのピィーー(効果音)が、あまりにも気持ちいいのですから……。きゃーー何言ってるのかしら私。神様、ふしだらな私をお許しください」
恋人の二人しか居ないはずの部屋に、突如として姿を表したのは。
青白い肌をしたグラマラスなボディーに、スケスケの黒いドレスを羽織った。
美しくも怪しいげな雰囲気を纏う女性であった。
と言っても、背中から生やしたコウモリの羽をパタパタと羽ばたかせて空中に留まり。
必要以上に突き出したお尻からは、黒くて細長い尻尾までが伸びている事から分かる通り。
メリエベーラは人間ではない。
意味深な目つきで抱き合っている二人を上から覗き込んでいる女性。
そう、彼女は男性の精子を糧に生きているサキュバスであった。
悪魔の系譜に名を連ねるだけあり魔法が使え、姿を消す事などは朝飯前なのである。
つまり良いムードになった二人が、あんな事やこんな事をしていたのを。
メリエベーラは、ず~~~っと姿を隠して見ていたということになる。
しかもサーラは昨夜の赤裸々な痴態まで、彼の前で暴かれてしまい。
動揺していらないことまで口走ってしまっていた。
あまりの恥ずかしさに布団を頭から被り、そのまま下に潜ってしまう。
それを見かねたヴァイスが、女2人の会話に割り込む。
「はぁ~~、メリエラ。あんまりサーラさんをイジメるんじゃないよ。また神聖魔法が使えなくなったらどうするつもりだ?」
「あ~ら、随分と他人事のようなおっしゃりようですこと。それもこれも貴方様がワタクシを抱いてくださらないのが原因ですのに……。よもや約束をお忘れとは言いませんわよね?!」
サーラが布団に潜り込んだ事により空いたスペースへ、大きくてまろやかなお尻を着き。
サキュバスがヴァイスに、グッグーーっと身を寄せて来た。
「いやいや、どんな約束だよ。お前とは契約しただけだから……」
慌てて上半身を起こし、ヴァイスは後ずさろうとしたが、すぐに背中が壁にあたってしまう。
「ワタクシならば、こんな青臭い娘などよりも、何百倍、いいえ、何千倍も気持ち良くして差し上げますわよ?何でしたら明日の朝まで、いいえ、主様がお望みでしたら一週間だろうが、一ヶ月だろうが、しっ…………ぽりとお付き合いさせていただきますわよ?」
「ムリムリムリ、そんな事をしたら干からびちゃうから……」
覆うものが無くなった彼の胸筋の縁を、赤いマニキュアに彩られた指先がゆっくりとなぞる。
たったそれだけでアソコがビクッンと強く反応してしまうが。
ヴァイスは勢いよく両手を伸ばす事で、メリエベーラの身体を遠ざける事に成功した。
しかしそれで引き下がるサキュバスではない。
例え相手の想い人が見ていようが、時間が昼間だろうが、何だったら大通りの真ん中であろうが。
悪魔にとって、そのような事は関係ない。
「ご安心くださいませ。そのあたりは十分に心得ておりますので。ご主人さまが回復できるギリッギリのラインまで、たっぷりと時間を掛けて心ゆくまで、最高のエクスタシーを堪能出来るようご奉仕させていただきます。だ~か~らっ❤」
「いや、だからって朝から服を脱がなくていいから……。だいだい昨夜だってお前、さんざん自分の手と尻尾で楽しんでただろ?」
メリエベーラは指をパチンっと鳴らして全裸になると、宙に浮いたまま彼の首に抱きついて来た。
自慢の大きな胸をムギューーーーっと押し付け、彼の耳元で熱い言葉で誘惑し続けている。
同時に先の尖った長い舌で、彼の耳をくすぐっていたりもする。
しかしヴァイスの方は至ってノーマルな人間であった。
抗いがたい魔性の誘惑を感じてはいるが、登山で鍛えた精神力をフル稼働して耐えてみせている。
そして毅然とした態度でサキュバスを強引に引き剥がしたまでは良かったのだが。
最後の最後で余計な一言を口走ってしまっていた。
布団な中で丸まり、二人のやり取りに耳を傾けていたサーラがパッと起き上がる。
「えっ、ヴァイスさん!メリエベーラさんが居ることに気がついてたのですか…………」
「あっ、ご、ごご、ごめんなさい。メリエラとは契約で魂が繋がっているから……あの、その、。でも、でも勘違いしないでください。僕が見ているのはサーラさんだけですから!アナタの事が大好きなんです!」
丸くて大きな青い瞳を目一杯開き、今にも泣き出しそうなサーラの表情を見て、ヤバいと感じ取りったヴァイスは、その場で飛び上がって正座すると、頭をベッドに擦りつけて謝罪した。
しかしこれだけでは不十分だと感じ取ると、すぐさまパッと起き上がり。
彼女の瞳だけをジッと見つめたまま、華奢で柔らかな肩を掴むと。
誠心誠意、真剣な表情をして訴えかけたのである。
何しろ前世も含めて、彼の人生でサーラほど素敵で素晴らしい女性に出会ったことがなかった。
しかも幸運な事に、お付き合いまでさせてもらっているのだ。
仕方なく契約したサキュバスなどに、邪魔されるわけにはいかない。
なお当のサキュバスは、勢いよく起き上がった彼が人睨みしただけで、壁際まで遠ざけられている。
二人が結んだ契約は対等なモノではなく、あくまでも従属契約であり。
勿論、
その気になれば、黙らせる事だって出来る。
「ふっにゅ~~~、ほ、本当ですか~~?」
「本当ですとも!」
彼からの突然の熱い告白に、白い顔を真赤にしたサーラが、今にも溶けてしまいそうである。
そんな彼女のうわ言のような問いかけに、ヴァイスはしっかりと頷くと、彼女の細い身体を強く抱きしめるのだった。
「あ~~やだやだ。甘ったるくて胸焼けがしそうだわ。ワインでも呑んで来よ~っと♪」
「お、おいこら!そんな格好で人前に出るんじゃない!」
そんな二人の様子を冷めた表情で眺めていたメリエベーラは、空宙でクルッと一回転すると人間の姿へと変わった。
と言ってもコウモリの羽と、細長い尻尾が消えただけである。
しかもそのまま、一糸まとわぬ姿のまま部屋を出て行こうとしたものだから。
甘いムードに浸っていたヴァイスが慌てて注意したのである。
何しろメリエベーラはサキュバスなのである。
男性の理想ともいえるボディーラインを持つ彼女の全裸は、どんな魔法よりも強力な武器となりえる。
大抵の男性はそれを見ただけでフルボッキし、彼女がウインクしただけで射精してしまう。
しかも彼女の魅了は、相手が同性であったとしても有効なのである。
もしもその姿のままで街中に出てしまったら、一体何が起きるのか?
主であるヴァイスにも分からなかった。
渋々と指を鳴らしたサキュバスが黒いドレスに身を包み。
横に張り出したお尻をフリフリしながら部屋を出て行く。
それを見送ったヴァイスが、手で頭を抑えながら重々しいため息を吐いた。
あまり深く考えずにメリエベーラと契約したものの、サキュバスはやはり悪魔であり、人間では無かった。
根底にある倫理観や道徳観が、まるっきり別物なのである。
硬く閉じた目を開いたヴァイスが、薄い色の金色の髪を伸ばした若い女性と向き合う。
「ごめんな、サーラさん。でも時々悩むんだ。悪魔なんかと契約している俺が、聖女様と付き合う資格があるのかなって」
「そんな悲しいことを言わないでください。貴方だけだったのですよ?私を救いに来てくださったのは…………。もう、これはおまけですからね。チュ」
今更ながら唐突に自信を失うヴァイスに対し、サーラは涙目で訴えかけた。
戦っている時の彼は、とっても勇敢で頼もしい戦士なのである。
しかし普段は真面目で優しい、どちらかと言えば大人しい印象を受ける男性であった。
そんな彼を少しでも慰めようと、サーラは背中に腕を回して抱きつくと。
恥ずかしそうに頬を膨らませてから、そっと唇を重ねるのだった。
そんな感じで、別の世界から転生した男、ヴァイスには、性格どころか存在自体が正反対の二人の美しい女性の仲間が居る。
一人は聖女として崇められながらも、
そしてもう一人は、上位悪魔を
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