誰よりも君が好きだから、僕は君に厳しくなるんだ!

神石水亞宮類

第1話 誰よりも君が好きだから、僕は君に厳しくなるんだ!




“誰よりも君が好きだから、僕は君に厳しくなるんだ!”




僕は彼女を追い込んだ後、いつも彼女にこう言うんだ!

君は泣きながら僕に抱きしめられる。

そして君は僕を許してしまうんだ。

僕は君を束縛する為に、産まれてきたんだと思う!

君のすべてを僕は知りたい!



【ドン、バチッ】

『今、何時だと思ってんだ?』

『ご、ごめんなさ、でもたった1分遅れただけで暴力を振るわないで!』


【ガンッ】

『“1分でも遅れたら、それは遅刻だろうが!”』

『“ごめんなさい、もう二度としないわ!”』

『当たり前だ! 絶対にこれからは門限を破るなよ!』

『・・・で、でも、18時が門限って、仕事が終わって晩の夕食に

スーパーに寄ったらどうしても、門限を少し過ぎてしまうの!』

『はぁ!? 僕が決めた門限が守れないっていうのか?』

『・・・そ、そうじゃないけど、でも、もう少しだけ門限を緩めても

いいんじゃなかって、』



【ドスッ】

『“もう一回言えるか? 僕が君に手を出ないうちに約束を守れ!”』

『・・・わ、分かったわ、約束する。』

『はじめっから、そう言えばいいんだよ!』

『ご、ごめんなさい、』

『“いいんだ! 僕も少し言い過ぎた! ごめんよ。”』

『・・・ううん。』




・・・僕だってよく分かってる。

“君を暴力で支配しようとしている事を、、、。”

それじゃ何も解決しないって事も知ってるのに、どうしても僕は君に

手をあげてしまう。

君の体中に僕のつけたアザが、僕と君を繋ぎとめているんだと勝手に

僕は想っていて、だから僕は君を殴る拳を下げる事が出来ないんだ!


“君につくアザは、僕が君を愛している証!”

僕は君じゃなきゃダメなんだよ! 【愛してる】

彼女は僕のその一言で、僕を簡単に許すんだね。



“愛”は時には刃物のように鋭く君を傷つける。

僕への愛は、まさに刃物そのものなのだと僕は思う!

君の泣き叫ぶ顔、恐怖に怯え僕を怖がる君を見ているのが辛いくせに、

僕の君への愛情は歪にゆがんでいる。


“僕は独裁者じゃない!”


いつか君を籠の中の鳥から飛び立つ日が来ると覚悟も決めているよ。

その時は、僕が君の為に死ぬ時だけどね。







【ドン、バン、ドスッ】

『また、お隣の旦那さん! 奥さんに暴力を振るってるのかしら?』

『“警察に連絡したらどうだ!”』

『・・・でもね、奥さんがそれを望まないとまた同じ事の繰り返し

だとワタシは想うの!』

『・・・・・・』

『奥さんが本気で旦那さんから逃げたいと思わないと、ワタシ達は

彼女を助ける事も出来ないのよ!』

『でもこのままだと、奥さんの命の問題があると思うが、』

『そうね、明日にでも奥さんに直接、聞いてみるわ!』

『ああ! そうした方がいい、我々は奥さんが逃げたいと本気で願えば、

いつでも協力すると伝えてほしい!』

『・・・えぇ、そうね!』

『なんとか今日を乗り切ってほしいがな、』

『・・・えぇ、』






・・・そして遂に、君は僕から本気で逃げる事を選択した。

隣の老夫婦の力でね。

僕はこの時を待っていたのかもしれない。

僕は君を追わないよ。

“やっと君を自由にしてあげられるんだ!”

さあ! 僕から解放されて、自由に何処へでも行くといい!



“さようなら。”

最後に、離婚届を書いたから、いつかまた君がココに帰って来たら、

サインしてくれればいい。


君はもう自由の身だよ。

全てを終わらそう!


【ありがとう、愛する君へ! 君を自由にしてあげる!】




 *




・・・僕は君が居なくなったこの家で、遺書を書き自殺する。

“もう終わりだ! 君を束縛する者はもう居ないんだ。”

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誰よりも君が好きだから、僕は君に厳しくなるんだ! 神石水亞宮類 @kamiisimizu-aguru

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