第28話 先輩ならどうしますか⁉︎

「先輩、先輩、永谷先輩! 俺、お見合いしなきゃいけなくなったんすけど、これってドタキャンしていいと思いますか⁉︎」


 会社に来て早々、酷い形相の水城が問い詰めてきた。


 お見合いをドタキャンする?

 そんなのダメに決まってるだろう。


「ドタキャンするなんて人として終わってるから観念して行ってこい」

「なーんで! そもそも先輩が早くシウちゃんを紹介しないのがいけないんすよ? 俺の運命の相手、マイスイートハニー!」


 誰が水城の運命の相手だって? まだ諦めていなかったのかと呆れつつ、ユウはシカトを続けることを決めた。


「先輩、無視は酷いッス! 助けてくださいよー、俺まだ結婚したくない! もっと可愛い子とイチャイチャしてシングル人生楽しみたい!」

「そんな軽い奴にシウを紹介しなくて心の底から安堵してるよ! けど、確か水城ってまだ若かったよな? 何でまたお見合いなんて……」

「んー……そりゃ、ちょっと家の事情で。俺の叔父さんが癌になって余命半年って宣告されたらしくて」


 おっと、思ったよりも深刻な内容だったぞ?

 ユウは心底聞いたことを後悔した。


「んで、その叔父さんが死ぬ前に娘の花嫁姿を見たいとか? そんなん俺には関係ないじゃんって話っすよね? 俺じゃない人とお見合いして結婚したら良いのに、何故か俺なんッスよ!」

「そ、そりゃお前のことをよく知ってる叔父さんだからこそ、娘を託せると思ってじゃないのか?」

「んなわけない! だって俺っすよ? 正直、俺が女なら俺みたいなチャラ男と結婚なんてしたくない! だって浮気をするのが目に見えているから!」


 浮気するの前提なのかよ! もうツッコミを入れるのもダルくなってきた。シウを運命の相手だとか、好きだと言ってる割にはチャラいな……。

 ユウはだんだん水城とお見合いをしないといけない従姉妹の女性が気の毒に思えてきた。


「それに従姉妹同士って、血が近いから障害を抱えた子供が生まれやすいって聞いたことがあるし。俺、子供はちゃんと欲しい派なんすよね。あ、代わりに先輩がお見合い受けませんか? 先輩も三十路前っすよね?」

「何で僕がお見合いしないといけないんだよ! そもそも水城には申し訳ないけど、先週からシウと付き合い出したから」


 ユウの言葉に水城がフリーズした。むしろ「は?」と自身の耳を疑い聞き返してきた。


「だから、僕とシウは先週から」

「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! そんなの信じない! 俺のシウちゃんが他の男と付き合うはずがない! しかも相手が先輩なんて! 俺の方が何倍も良い男のはずなのに!」


 いや、女の子が大好きすぎる男なんて、絶対に願い下げだ。


「それは誤解っす! 俺は一度惚れた女の人には一途っすよ? だからシウちゃんだけは特別に永遠に大事にしますから!」

「あ、そういうのいらないんで」

「くそぉぉぉぉ! 先輩のくせに! なんかズルい!」


 全身で思いっきり嘆く水城を見ながら、ユウは面倒そうに後頭部を掻いて大きな溜息を吐いた。


「神崎さんもお見合いで結婚することになったらしいし、思い切ってしてみれば? もしかしたら案外悪くないかもしれないよ」

「先輩、他人事だと思って甘すぎッス。俺が盛大に落ち込んで鬱になっても知らないッスよ?」

「いや、そもそも本当に他人事だし。シウの件で相当水城にボロボロにされたから。僕なんかに相談しないで自分で解決してくれって思ってるかな」


 その言葉を聞いて、水城は自らでたサビを大きく嘆いていた。いくら運命の美少女を目前にしていたとはいえ、職場の先輩を小馬鹿にするのはやり過ぎたと。


「けど先輩、俺……お見合いなんてしたくないッス」

「そろそろ諦めて家庭に収まって落ち着けって」


 ガンガンガンっと盛大に床を殴りながら水城は蹲った。



 ・・・・・・・・・・★


「クソクソクソク! 先輩め、他人事だと思って酷い人だ! シウちゃんにチクってやろーっと!」


 瀬戸くんに引き続き、今度は水城の番ですw

 書けば書くほどifの水城は往生際が悪くなる^^;

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