第25話 恥ずかしいんだけど……!

 一旦、服装を変えてくると連絡をもらったユウは雪村と一緒に駅ビルで時間を潰していた。

 成人式当日ということもあり、普段よりも人口密度が高かった。


「それよりさ、僕まで一緒でよかったんかな? 完全に部外者じゃない? 初対面だよ?」


 流石に気まずさを覚えた雪村は心配そうに声を掛けてきたが、ここで彼を帰してしまったらシウに何を言われるか分からない。ユウの脳裏にはシウと隠れて交わした会話が過っていた。


「ねぇ、ユウ。多分なんだけど———和佳子、雪村さんに気があると思う」

「……うん、流石の僕も気付いた。それに雪村も満更じゃないと思うよ」


 彼女がいないって話していたし、ラブが生まれるのかと思うと、二人もソワソワして気持ちが浮き立っていた。


「ねぇ、ユウはさり気なく雪村さんに探りを入れておいて? 私達も出来るだけ早く合流するから!」


 そう頼まれたので、それとなく話題を振ろうとするが、そんな時に限って上手くいかない。恋愛スキルの無さを痛感して嘆くユウだった。


「それにしても永谷の彼女、綺麗だったね。もしかして芸能関係?」

「え……、いや、そんな話は聞いたことがないけど」


 もしかして雪村はシウみたいなのが好みなのか?

 シウは綺麗系で、和佳子ちゃんはどちらかというと可愛い系だ。いつもニコニコしていて元気いっぱいな雰囲気が彼女の魅力だ。

 もしシウみたいなタイプが好みだと言われて、シウを狙われても気まずいのだが?


「最近の若い子って、スタイルいいもんな。化粧とかしてると年齢不詳で分からないし。

 あのシウの友達の子もこの前紹介してもらったんだけど、全然雰囲気が違っててビックリしたし。あの子も可愛かったよな」

「あぁ、あの子か……。確かに可愛かったね」


 あの時の和佳子さんの様子を思い出したのか、頬杖をつきながら楽しそうに笑っていた。

 どっちだ? それはどういう意味の笑みなんだ?


「———なぁ、雪村。お前はさ、どういう女の子が好み?」

「え、急にどうしたん? えー……よく笑ってくれるような、優しい子?」


 抽象的な好み! 当てハマるって言えばハマっているけど、イマイチ決め手に欠ける。そういえば職場でもモテると評判だったし、それなりに交際経験もあるのかもしれない。


「なぁ、雪村。今までどんなタイプの女性と付き合ってきた?」

「さっきから何? 自分が美人で若い彼女が出来たからって惚気ようとしてる?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」

「僕は色々だよ。同級生もあったし、年上もいたし。あ、でも年下はないな」


 そのはどっちだ?

 出会いがなかった? それとも年下は対象外なのか⁉︎

 だが、追求する前にタイムリミットが来てしまった。シウ達が合流してしまったのだ。


「ごめんね、遅くなって」

「し、シウ……! いや、そんなことはない」


 むしろ遅くてもよかったくらいだ。なんてタイミングが悪いんだとユウは一人で嘆いていた。


「ごめんね、永谷に引き止められて僕まで一緒になったんだけど、邪魔じゃないかな?」

「とんでもないです。むしろこちらこそ無理言ってしまってスミマセン」


 四人テーブル。シウがユウの隣に座り、和佳子が雪村の隣に座った。和佳子は顔を真っ赤にしたまま俯いて、恥ずかしそうにモジモジしていた。


「……本当だ、二人とも着物を着ていた時と雰囲気が違って見えるね。さっきは大人っぽく見えたけど、今は年相応の可愛い雰囲気だ」


 綻ぶように笑って場を和ませようとする雪村。やっぱり恋愛経験のある奴は言うことが違うと感心していた。


「か、可愛いなんてそんな……! ゆ、雪村さんの方こそイケメンすぎて息するのを忘れてしまいそうになります!」


 一方、テンパって意味不明な言葉を発する和佳子にユウもシウも落ち着かせようと焦ってしまった。息はしよう、倒れてしまったら元の子もない!


「はは、僕はそんなイケメンじゃないから。メガネ掛けてるから雰囲気イケメンとは言われるけど、それって皆騙されてるだけだからね。本当のイケメンは永谷みたいな整った顔の奴だよ? ただコイツの場合は抜けてるところがあって残念イケメンだけど」

「雪村、上げて落とすのはやめてくれないか? しかも彼女の前で……」

「え、彼女の知らない一面を教えてあげようと思ったんだけどなー? ね、シウさん。職場での永谷の話とか聞きたいでしょ?」


 雪村の言葉にウンウンと興味津々に頷いているが、こっちは何を言われるか堪ったもんじゃなかった。もう二度とシウに友人を紹介してやるもんか!


「でも雪村さんってモテそうですよね? 彼女とかいないんですか?」


 両手で頬杖を付いて、ニコッと笑うシウに同調して聞かれた雪村も微笑んだ。意味深なやり取りに外野の二人はオロオロするしかなかった。


「あいにく今は独り身だよ。永谷を見てるといいなとは思うけどね」


 少し含みを帯びた言葉に、突き放すような抗力を感じた。この言葉選び、ユウにも身に覚えがあった。


『今は恋愛してる気分じゃないから放っておいてほしい』


 そんな牽制に、無闇な追求はできなかった。



 ・・・・・・・・・・★


「ん? ん?? シウもユウさんもどうしたんだろう? なんか雰囲気が重くなった?」


ん、あれ? スムーズに進まないのかよ!

けど本編に比べればマイルドな壁ですねw

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