第18話 歯止めが効かないんだけれども
結局、互いに歯止めが効かなくなったユウとシウは、そのまま求め合うようにキスを続けていた。身体に腕を回し、身体を擦らせるようによがらせて、今までの時間を埋めるように交わった。
「待って、ユウ兄ちゃん。私……」
「なぁ、シウ。そのユウ『兄ちゃん』っていうの……やめない? ごめん、僕の勝手な気持ちなんだけど、その……微妙な背徳感があって」
ユウの言葉に虚をつかれたシウは、面白がるように口角を上げて笑みを浮かべた。それは実に嬉しそうに……。
「それじゃ、ユウって呼んでいい? あと、そう呼ぶってことはもう、ただの幼馴染のお兄ちゃんじゃなくなるってことだけど、本当にいいの?」
さっきまで涙目で怯えていた目が上目で覗き込んできて、いつのもシウの表情に戻っていた。
そんなの今更だ、もちろんそのつもりだ。
「シウこそいいのか? 僕は……全然女心も分からなくて経験も乏しい、全く大人の男じゃないけど」
その言葉にシウは大きく首を横に振って否定してきた。
そしてグイッと抱き寄せて、額同士を合わせてきた。
「経験なんていらないよ。全部、私と作ってくれればいいし、その方が嬉しい。それに優しいユウがいてくれたら、それで十分……。むしろ女心なんて覚えないで、私だけを見てて……?」
シウの熱い吐息が唇にかかる。手のひらで支えていた床だったが、肘をつき、さらに距離を縮めた。興奮を抑えきれなくて、主張した下半身が彼女の柔らかい太腿に埋められる。モゾモゾと動く度に頭の中が真っ白になる。
そもそもシウの格好……、会わないと決めていたせいなのか、あまりにも無防備すぎて目のやり場に困った。上は厚手のパーカーを羽織っているものの、その下はキャミソールのみ。下着を着けていないのか、二つの突起がくっきりと形を描いていた。そして下も……ショートパンツとみずみずしい生足がユウを誘惑して止まなかった。
両思いになったのなら、先に進んでもいいのだろうか?
この目の前の谷間に顔を埋められるのなら、死んでもいいと思えるほどに魅力的で仕方なかった。
「……ユウ? もしかしておっぱい触りたい?」
「えっ、いや! そんな!」
何でバレたと慌てて距離を取ったが、すでに手遅れだった。シウも身体を起こして両手で顔を覆いながら楽しそうに笑っていた。
「だってガン見してるんだもん。流石にそんなに見られたら、私も気付くよ?」
「む、無意識だった。ゴメン、そんなつもりじゃなかったんだけど」
「ううん、むしろ嬉しいからいいよ。でも今日は我慢してね? きっと触られたら私……歯止めが効かなくなるから」
そんなシウの態度に限界を超えそうだった。
無理、今すぐメチャクチャに抱き締めたい———!
だがその衝動を抑えて、改めてシウに尋ねた。ここまで確認し合って今更だけど、ちゃんと言葉にしたかった。ユウは緊張を誤魔化すかのように生唾を飲み込んだ。
「シウ、改めて———僕と付き合ってくれますか?」
「———はい。こちらこそよろしくお願いします。ユウ、ありがとう」
よく見れば涙の跡が頬に残って見えた。部屋に閉じ篭っていた時、ずっと悲しんでいたのかと思ったら酷く胸が痛んだ。
こんな自分を想って、笑ってくれたり泣いてくれるシウが堪らなく恋しかった。
「あのさ、早速だけどユウは仕事いつ休み? 今度デートしたいんだけど」
「で、デート……! あぁ、えっと水曜が定休だけど?」
「それじゃ一緒に映画を見に行こう? 思いっきりオシャレしていくから……ね?」
彼女の一つ一つの動作に目を奪われる。結局、シウに言われるがままに約束し、その日はそれで終わった。
それにしても———これは本当に現実なのか?
あまりにも幸福過ぎるエロい展開の連続で、自分に都合のいい夢を見ていたんじゃないかと疑ってしまった。白昼夢? それとも夢遊病?
いや夢遊病は全然違うか。
何にせよせっかく得た結果だ。もう二度と選択を誤らないように身を引き締めていかなければならない。
だがそんな決意表明よりも越えなければならない問題があった。
そう、ここはシウの実家で、引きこもりになった娘を心配してる両親が見守っている状況だったのだ。
階段のところから感じるニヤニヤしたいやらしい視線。一気に現実に引き戻された。一体、あの人たちはいつまで見ていたのだろうか?
「ふふふー、ユウくん。大胆だったねー♡」
「最初はどうなるかと思ったが、君の熱いパッションが伝わってよかったよ。なぁに、童貞でも問題ないさ! 30歳になる前で良かったじゃないか!」
良くねぇよ! クソっ、全部丸っと覗き見かよ!
危ない、もしあのまま雰囲気に流されて行為に及んでいたら、とんでもない初体験をするところだった。
だが、この二人のおかげでシウと仲直りすることができたんだ。
ユウはグッと気持ちを押し込めて、深々と頭を下げた。
「お二人が大事にしてきたシウさん、もう泣かせたり悲しませたりしませんので、どうか……僕達のことを温かく見守ってください!」
そんなユウの態度に二人は顔を見合わせ、ポンっと肩を叩いた。
「もちろんだよ、ユウくん。これからシウのことをよろしく頼んだよ」
ミチさんとイコさんに祝福され、晴々とした気持ちでユウは自宅へと戻っていった。運転している最中も、ずっと顔のニヤニヤが止まらなかった。これから先の未来を想像しただけで楽しくて堪らない。
だがこの時のユウは気付いていなかった。シウの愛は、ユウが思っている以上に重かったことに———……。
・・・・・・・・・・★
「やっと……大好きなユウ兄ちゃんと付き合えることになったんだね♡」
やっと付き合った二人ですが、少し波乱要素でヤンデレを追加ですw
ユウには少し甘過ぎる試練を与えます(笑)
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