第19話 情けない話
その日、シウとも仲直りして安心して眠りについたのだが、どうしても信じられなくて半信半疑な気持ちでベッドに潜り込んでいた。
だがそれもやむ得なかった。あんな年下で可愛い子が付き合ってくれたなんて、
とりあえず水曜日は一緒にデートに出掛けることになったが、大丈夫か?
「うわぁぁぁぁぁーっ! マジでヤバい! 女子って何が喜ぶんだ? デートに来ていく服もねぇし、そもそも何を見れば良いんだ⁉︎」
スマホの検索が止まらない。デートってことは映画を見て終わりなわけがない。それまでの時間をどう過ごそう? そもそもシウはどんな映画が好きなのか? ホラー、恋愛? それもとアクション系?
「ヤバい———……! シウのこと、何も知らないぞ……?」
ユウの中でのシウの記憶が幼少期で止まっていた。それが突然18歳の女性になって現れたんだ。頭がバグっても仕方ない。
だが、だからと言って手を抜いていい理由にはならない。せっかくの初デートなのだからシウには楽しんでもらいたい。
頭まで毛布を被って悩んでいると、ポンっとメッセージが届いた。
『ユウ、まだ起きてる? 今日はありがとう♡』
「し、シウ……!」
『まだユウと付き合えるようになったことが信じられないよ。もしかして夢だったんじゃないかって、ほっぺたをツネっちゃう』
スタンプと一緒に送られてきた文章に思わず胸がキューッと締め付けられた。
そうか、恋人同士になったら毎晩こんなふうに連絡を取り合ったりするのか! こんなメッセージが届くたびに心臓がバクバクして頭が真っ白になる。
「幸せ過ぎて死にそうだ……! 世のカップルはこんな幸せばかり味わっていたのか!」
28年間も未経験だったのが悔やまれ得る。いや、死ぬ前に味わせただけでも幸福だと思うべきなのだろうか?
きっとシウに嫌われたら一生誰とも付き合えないだろうから、絶対にこの
それまでゲームや動画を見るくらいしか使っていなかったスマホが、ものすごく貴重なモノのように感じて見えた?こうしてシウと一緒にやりとりをするのが楽しい。
好きだ、きっと自分が思っている10倍はシウのことが好きで堪らない。そんな考えながら打っていると、返信の文章に思っていた文章が打たれていたことに気付いて慌てて削除をしようと×マークを押した。だがそんな時に限って誤って送信ボタンを押してしまい、そのまま顔面にスマホを落としてしまった。
「うっ、痛っ……! って、それより既読———!」
急いで削除をしようとしたが、既に読まれた後だったらしく『私もユウのことが大好き♡』って、目が覚めるような嬉しい返信が目に入った。
可愛過ぎるだろう、こんなの! 両手で顔を覆って、近所迷惑にならない程度に思いっきり胸の丈を叫んだ。
そしてその夜はそのまま眠りについたのだが、何だが違和感を覚えて眠たい眼を擦りながら毛布の中を覗き込むと、ベッドに潜り込んでいるシウがいて、思わず叫び声を上げそうになってしまった。
な、何でここにシウがいるんだ⁉︎
彼女は下着姿のまま谷間を主張するように腕を組んで、ゆっくりと身体を起こしてきた。
バッチリと化粧をして、上目で甘えるように覗き込んで。その妖艶な仕草に生唾を飲み込んだ。
「だって、やっとユウと付き合えるようになったんだもん。恋人同士になったんだから、エッチなこともしていいでしょ?」
「い、いや、でもシウ! 僕らは今日付き合ったばかりなのに」
「そんなこと関係ないよ。ユウ、大好き……♡」
そう言ってユウの手を胸に押し付けてきたのだが、手の平に伝わるはずの柔らかい感触がない。何なら温もりも、何も伝わらない?
あ、コレ……夢か。
だが、そう気付いても尚、夢の中のシウは止まることなくブラジャーのホックを外して、両手で双方の丘の頂を掴んで身体を縋らせてきた。
これは夢だ、現実じゃない。このシウも自分の想像の産物であって、実際のシウではないのだが!
ゆっくりと外れる指、手……。白い肌に桃色の突起が見えそうだ。
「ンんっ、そんなに見られたら恥ずかしい」
「シウ、その僕は」
彼女の手首を掴んで、目の前のご開帳を刮目した瞬間、「ジリリリリリリー……」とアラームの音が鳴り響いた。
お約束なのだが、どうせ夢だと最初から気付いていたのだけれども!
「———自分の夢の中くらい、思い通りに見せてくれよ……!」
欲求不満丸出しの夢の結末に、ユウは本気で涙を流しながら自分の不運さを恨んだ。
・・・・・・・・・・・★
「こんな夢の時に限って、二度寝をしても見れないんだよな……!」
きっとすぐに見れると思うけどw
付き合いたてならではの話を書いてみました(笑)
次回から6時45分に更新します。気になる方はフォローをよろしくお願い致します✨
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