第13話 意外な告白

 次の日、イコさんにランチに誘われたユウは職場の近くのオムライス店へと入って行った。店内に入った瞬間、甘くて美味しそうな香ばしい香りが漂い、空腹のお腹を刺激してきた。


「あ、ユウくん! こっちこっち」


 入ってすぐの席に座って待っていたイコさんに挨拶を済ませ、向かい合うように座った。

 この前はあまり話が出来なかったが、まさかこんなふうに話すことになるとは昔の自分からは想像できなかった。


「ユウくんはメニュー決まった? 昼休みだからそんな時間取れないでしょう?」

「そんな気にしなくていいよ。午後からはアポイントに行くって連絡してるから」


 それよりもシウの様子を聞きたいのだが、どう切り出せばいいか悩んでいた。母親であるイコさんに話していいのだろうか?


「ふぅん、意外とシウの一人相撲かと思っていたけど、ユウくんも満更じゃないんだー? でも彼女は? 出来たって話してたよね?」


 本来なら別れたと言って何事もなかったようにしたかったが、ユウは洗いざらい白状してしまった。彼女が出来たことも、全部嘘だったと。


「は? ユウくん最低だねー! それなら最初から白状すれば良かったのに!」

「ごめんって! その点に関してはスゴく反省してる……もう嘘はつかないから」


 すっかり頭が項垂れたユウに呆れつつも、イコは苦笑を浮かべながら許してあげた。


「まぁ、付き合ってなくて良かったわ。あのね、私の話からしていいかな? ちょっと重い話になるんだけど」


 そう言って話してくれたのはイコの旦那であるミチさんの話だった。ミチさんは最近、人間ドックでガンを早期発見したそうだ。幸い初期の段階で見つかったので大事には至らなかったが、少し弱気になってきたとか。


「私達に心配かけまいと明るく振る舞っているのは分かっているの。でもこればかりはどうなるか分からないでしょ? それでね……もしユウくんが良かったらシウとお付き合いしてもらって、行く行く会社を継いでくれないかなーって思ったり」

「———え?」


 何でそんなことに⁉︎

 いや、ご両親からの後押しがあると嬉しいけど、いくら何でも飛躍しすぎでは?


「お正月の時の二人の様子を見ていたら微笑ましくてね。ほら、ユウくんは不動産関係の仕事をしてるから業種もそんなに違わないし。シウも建築の勉強をするから本格的なことはシウに任せてサポートに徹してくれればいいから!」


 だがタイミングが悪い———……。

 ユウは両親の結婚攻撃を避けるために偽りの交際を告げ、そのせいで色んな人を傷つけたのだ。まずはシウに謝罪をし、許してもらうことが第一だろう。


「とりあえずはさ、今日仕事が終わってから家に来なよ? シウもちゃんと謝れば許してくれると思うよ」

「自分でも反省してる……。二度とこんな真似はしないから」

「当たり前でしょ! もう全く、子供の頃はあんなに素直でいい子だったのにー。こんなズルい大人になるなんて本当にやーねー」


 いっそここまで貶されたほうが清々しい。

 そしてこの竹を割ったような性格のイコさんこそ憧れていた彼女だったことを思い出した。大人になるのは嫌だと言っていたけど、大人になっても変わらないものもあるのは嬉しいことだとユウは細く笑っていた。


「でもねユウくん。その神崎さんっていう人? 気をつけておいた方がいいわよ? ちょっと一筋縄じゃいかない気がするから」


 そうは言っても元々正月限定の偽り契約だ。その先のことは責任は持てかねない。


「………ユウくんってさ、変なところで人を疑わない性格よね。人はね、もっとドロドロして救いようもない生き物なのよ? 何かあった時はいつでも相談して? あとどんなややこしいことでもシウにもちゃんと説明すること! こういうことは隠されている方が問題になることが多いんだから!」


 何故かイコさんが言うと妙な説得力を感じるのは何故だろう? だがこんなに親身になってくれる人を頼らない方が失礼に当たる気がして、万が一の時は相談させてもらおうと頭の隅に置いておいた。


 何がともあれまずはシウとの仲直りが最優先だ。強力な味方をつけ、改めて自宅を訪れれることにした。


 ・・・・・・・・・★


「ちなみにシウの連絡先はちゃんと本人から聞きなさい? 私から聞いたってバレたら余計にヘソを曲げるわよ、あの子」

「うぐ……っ、ご、ごめんなさい」

「ユウくんってしっかりしてるように見えて、実は結構抜けてるのねー……」


ハーレムラブコメにしようかと迷ったけど、やっぱりユウシウにはそれはに合わないと思い、ストレートに進めていきます!


次回の更新は12時05分です。

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