短篇「死後ノ信号」(完)

不可世

一話完結

時期尚早に事を述べる

私は人に用意された死という現象において

あまりに無知であった

例えば、生きるか死ぬかの瀬戸際で

死んだら終わりだと

そう決めつけているのは人類の早とちりだったのだ

つまり矢継ぎ早に話を込めるが

死とは、人にとっての終わりではなく、

人を試す運命の瞬間だったのだ


つまりは

死とは生命反応の一部であり

細工を施すことで

新たな体験をする事ができる

まず現世界において死という現象は

動かなくなる事、意思疎通を取れなくなる事

そう断片的な判断で解釈していた


しかし私は死に対する交信を可能にする事に成功した


死には2通りある

寿命を全うする、または殺される

そう究極的に割り切れる

では死の本体は、時間だけではなく、意思によっても殺される事もあるのだ

ではこの両極から、一つの考察に行き着くはずだ


死は時間もしくは殺人によって生じる、活動停止信号だということだ。

この信号自体を人は認識出来ていない

よって死後の人間とアプローチを取れないのだ

では、信号の発生条件が殺人か、寿命か、とは分かったのだ、

あとは受け取り方を、信号の視認化を実験する他ない


その方法とは信号を逆説的に送ることで出来るはずだ

つまりは、生の信号である、電子パルス、もとい神経伝達に

死者の神経伝達網を送信するのだ

つまりは脳内に死者と同じ電気信号を送り、

自身の中に死の信号を取り込むのだ

それによって生きながらにして、死者との疎通を可能にする事ができる訳だ

では早急に、死者のパルスを肉体に取り込む装置を作って欲しい。

今まさに私は、失った家族とまたは偉人と再会を果たしたい。

その為になら、何百と死体を用意する

だから、どうか、この時代に、実現して欲しいと、

切に願っている。

では、やってくる。

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