第14話 おっさん応援する
とある日曜日の朝。私はとある公営の体育館の駐車場にいた。
今日は、他道場主催の大会の日だ。
息子も試合に出るので、送迎兼応援のため隣の市にある会場に来ていた。
大会は午前と午後に分かれており、午前中は型の試合、午後は硬式組手の試合だ。
私の通う道場は比較的歴史が長い。なんでも先代の会長が結構有名な人らしく、そのおかげかあちこちの大会から出場のお声がかかるそうだ。
ただ、元々フルコンで組手を行ってきており、硬式に関しては今回が2回目。選手たちも不慣れで、組手に関しては少々厳しそうだ。
但し、型に関してはシュウタ君をはじめ有力選手が多いので、入賞はある程度期待できそうだ。
ちなみに我が子はというと、本人もあまりやる気がなく、今回も型・組手共にあまり期待できそうにない。
私は入門前は保護者として観戦に来ていたし、もちろん我が子だけでなく他の道場生の応援もしていた。ただ、やはり一緒に汗を流した子供たちが試合に出るとなると、応援のモチベーションも高くなるというものだ。
体育館の2階席に道場の保護者で場所をとり、開会式を待つ。
開会式まで30分程だ。
朝も早かったので、玄関の自販機にコーヒーでも買いに行こうとした矢先、
スーツを着たヒロキ君から声がかかる。有段者のヒロキ君は今日は審判の補助員だ。
「お父さんすみません、館長の所に行ってもらって良いですか?」
「わかりました。」
何事だろうか?館長は来賓席だしヒロキ君も補助員の役目があるから子供たちの引率かな?そう予想しつつヒロキ君と共に正面の来賓席にいる館長の下へ向かう。隣に座る高齢の男性は会長の様だ(席の名札で判断した)。
「押忍、失礼します。今日は宜しくお願いします。」
「お父さん、お疲れ様です。お呼びたてして申し訳ありません。お父さん、まだ会長とお会いしてなかったのでちょうど良い機会と思いまして・・・。」
横にいる高齢の男性がほほえみながら挨拶する。
「初めまして、○○です。お話は聞いております。田口先生の所でやられていたそうですね。あそこは名門ですからかなり鍛えられてるでしょうね。息子(館長)やヒロキからも色々聞いておりますので期待していますよ。」
「ありがとうございます。まあ、やっていたといっても子供の頃ですから・・・。
この歳ですし練習についていくのがやっとです。」
横にいるヒロキ君が口をはさむ。
「会長、こんなこと言ってますが、お父さんかなり強いですよ。フルコンにもすぐ対応してますし、動きも良いです。来年あたり成人の部の試合に出てもらいましょう。」
「ほう、それは楽しみですね。期待していますよ。」
「勘弁してください・・・。半殺しにされます・・・。」
そんなやり取りをしていた矢先、笑ってみていた館長が私に声をかける。
「そうそう、お父さん。マサは型と組手両方出ますよね?」
「はい。」
「ちょっとお願いがありまして・・・。選手の誘導や記録員は主催道場の保護者の皆さんがしてくださるのですが、今日は人数が足りないみたいなんです。で、各道場でボランティアを出せるところは出しましょうということになりまして・・・。」
みなまで言わなくても理解した。子供の空手の大会、特に小さな大会では保護者がボランティアをすることが多い。
「大丈夫ですよ。息子の試合の時は抜けさせて貰えれば問題ないです。」
「もちろんです。助かります。できればルールを理解している人の方がスムーズですし。」
こういう時は助け合いだ。近くで試合も見られるし。
そういう訳で急遽大会のボランティアとして動くことになったのだが・・・。
次回につづく
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