第12話 おっさん突きを学ぶ

以前蹴りの時も書いたが、伝統派とフルコンでは試合の勝敗の決め方が違う。

フルコンでは相手にダメージを与えることが重要なので、ある程度効かせる攻撃が必要になる。


今回の課題は突き、つまりパンチのことだ。ボクシングと違い、フルコン空手では顔面へのパンチが禁止なので、中段つまりボディに対してダメージを与えなければならない。


後輩の夏井さんは勿論、長谷部さんとやっている時でもそれなりにダメージを与えているみたいでパンチの打ち合いになれば、ほぼ互角か体格で勝る私が少し押し気味になるのだが、ナオキ君とやると完全にこちらが押されてしまう。ナオキ君のパンチはめちゃくちゃ効くのに私のパンチは効いている感じがしないのだ。


ちなみにサトシ君に関しては、打ち合いの時に巧妙に芯を外しているみたいで、こちらも何となくそれは分かる(手ごたえがない)。ヒロキ君の場合はこちらに付き合って真っ向から打ち合ってくれるので、手ごたえはあるのだが、ヒロキ君は意に介していないようだ。


というわけで思い切ってヒロキ君に聞いてみることに。



「お父さんの突きは確かに重いです。ただ、効かないんですよね。おそらく前に出るという意識が強すぎて、押し気味になっていると思います。」

「そういえば、下がりたくないから前に意識が行ってる気はしますね・・・。」


「後ろに押し出すのではなく、壁に突き刺すイメージですね。突いた後に引きを意識すると、威力が増しますよ。お父さんの体格でそれをやられたらかなり嫌ですね(笑)」


なるほど。早速サンドバックで試してみる。確かに手ごたえが良い。


「いいですね。これから組手がしんどくなりそうです。」


今までフルコンという意識が強すぎて、なるべくひかないようにしていたのが良くなかったようだ。ヒロキ君の指導のおかげで、突きの威力も上がりそうだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る